パステルナークが情けなさ過ぎる(結局どちらとも別れない)が実際こんなものだったのかも。
オリガも清廉な人物ではない。パステルナークの家族からすれば略奪者だ。
戦争中に活躍し”祖国に貢献”した女性が戦後は男性たちにその活躍の場を明け渡し、忘れ去られ、どうかすると嘲笑や中傷の的になったりする様子は、例えばラリーサ・シェピチコの名品「翼」で切なく描かれ、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチも『戦争は女の顔をしていない』で容赦なく綴ったものだけれど、この本ではアメリカでも戦中にスパイとして活躍した女性をしれっとないがしろにするような、あるいは女性の提言を男性が自身の手柄として掠め取るような今でもしばしばあるあるあるの場面があり、女性蔑視の世相が描かれていて、タイピストたちの登場場面は生き生きとしているけれど思い当たる様々なことどもがなかなか辛い。
マイノリティーの問題、有能ならいいんじゃないかと感じるのはおそらく現代の感覚であって、当時全くそれを許さない社会だったのか(露見したら即追われてしまいう)と改めて思う。『四人の交差点』を思い出すなど。ストーリーはそっちの方にいっちゃうんだ…という風には感じちゃったけれど。
オリガも清廉な人物ではない。パステルナークの家族からすれば略奪者だ。
戦争中に活躍し”祖国に貢献”した女性が戦後は男性たちにその活躍の場を明け渡し、忘れ去られ、どうかすると嘲笑や中傷の的になったりする様子は、例えばラリーサ・シェピチコの名品「翼」で切なく描かれ、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチも『戦争は女の顔をしていない』で容赦なく綴ったものだけれど、この本ではアメリカでも戦中にスパイとして活躍した女性をしれっとないがしろにするような、あるいは女性の提言を男性が自身の手柄として掠め取るような今でもしばしばあるあるあるの場面があり、女性蔑視の世相が描かれていて、タイピストたちの登場場面は生き生きとしているけれど思い当たる様々なことどもがなかなか辛い。
マイノリティーの問題、有能ならいいんじゃないかと感じるのはおそらく現代の感覚であって、当時全くそれを許さない社会だったのか(露見したら即追われてしまいう)と改めて思う。『四人の交差点』を思い出すなど。ストーリーはそっちの方にいっちゃうんだ…という風には感じちゃったけれど。
書き忘れてたこと:『あの本は読まれているか』でイリーナが同僚たちからロシア人と言われて私はロシア系アメリカ人だアメリカで生まれたのだと言う。それでもスプートニク打ち上げ成功のニュースにCIAの上司や同僚たちは深刻なショックを受けるがイリーナは誇らしいような気持ちになる。今まで自身の中の”ロシア”を否定しがちだった彼女がなぜソ連の偉業を誇らしく感じるのか、複雑な心理が淡々と描かれる。イリーナの後々の行動は小説の中ではぼかされているし彼女のアイデンティティや心情の行方もおそらく意図的に描かれていないのだが、周囲からのロシア人扱いは繰り返し描かれる。
どうでもよい補遺
Twitterで表記のことで呟いたら訳者から丁寧なリプライをいただいた。
「ツェントラリニ・ドム・リテラトロフ」345頁
ただの片仮名書きになっているけど文学者中央会館とでもルビを振っておいてほしかったな
パステルナーク(に限らず文学者たち)が出かけて人と会ったり朗読会に出たり食事をしたりするところなのだろう
http://cdlart.ru
増刷の際に、「文学者中央会館」というルビをふるということにしていただけたそうだ。
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