2017年4月29日土曜日

映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」

映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」
初日初回で観たが、60点くらいか。
 
・イギリス人視点だからかロシア革命のことぼろぼろに言っている。
 革命の時に、冬宮に蜂起した人たちがなだれこんできて(エイゼンシュテイン「十月」の映像を使用している)、ワインセーラーのワインは叩き割られてしまったというエピソードが紹介される(飲んじゃったんじゃないのかあ)。
 スターリン時代、一部の所蔵品が外貨を稼ぐためにアメリカに売られてしまったことや、現代芸術に理解がなくて職員が収容所に入れられたりしたことなどが語られ、革命怖いよ~と強調したい空気を感じるが、結局はロシア人としては
「それでも守り抜いた」ことを言いたいらしく、
「フランス革命より文化に優しい革命だった」
という結論が述べられたのだった。
 
最初に訪れた90年夏、臨時政府の大臣達が逮捕された部屋の止まった時計の前でガイドさんが「ここで偉大な社会主義が生まれたのです」と棒読みしていた、その部屋を久しぶりに観たのが感慨深い。
 
エルミタージュでは、いろいろな子ども向けイベントをやっていると聞くが、映画中では氷像制作が出てきた。
氷の彫像を子ども達が作ったのを館長さんが見て廻るが、猫像はじめ力作揃い。
どこぞの雪まつりだと体力のある公務員さん中心だと言うが、子どもがこれ作ったのだろうか?大人のサポートは当然あったとしても凄い。
 
 
90年夏の宮殿広場、エルミタージュ
 
 
・マレーヴィチのところでおどろおどろしい音楽で駆け抜け
 
・小さな守衛さん達は最後の方ちょっぴり出演。
 ちょっとオタクっぽい現代芸術家?エリック・ヴァン・リースハウトErik van Lieshoutのインスタレーションとしての登場。
 もっと登場場面は多かったらよかったのに!!!
 
『КОШКИ』は映画館では売っていません。
エルミタージュのミュージアムショップで買ったものです。
エルミタージュ所蔵の猫絵(地域・時代別)ガイドと守衛さんの写真という優れもの。
 
 
 
ヒューマントラスト有楽町お馴染みの映画に即したメニュー、「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」ではなぜかアイスフレバーティー?

上映後にトークショーあり。
実のところ、沼野先生とか沼辺さんとかのトークだったらよかったけれど、ま、贅沢は言うまい。
特段有益な情報はなかったが、最後に、エルミタージュ美術館展に行くにあたり漫画でも本でもロシアの歴史を知って行くとよいとの真っ当なアドヴァイス。
この映画中では、レニングラード封鎖を生き抜いた体験者の女性が登場し、おばあ様の飼っていた猫を食べることになった悲惨な話を語る。
お母様が、孫とどっちが大切か?と詰めよって、おばあ様、泣いて差し出したっていう。辛い話だが、「おいしかった」という。革のベルト、壁紙も食べてしまい、家具を燃料にして生き延びる。といっても住民の1/3は亡くなったのだ。
(今年はショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」初演から75年である。)
 
エルミタージュとレニングラード封鎖についてなら、イギリス人監督の「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」よりソクーロフの「フランコフォニア ルーヴルの記憶」の方がずっしりきた。ルーヴルについて撮ったようでありながら実は限りなくロシア、ペテルブルグ、エルミタージュ愛に満ちていた。
 
 
 

2017年4月24日月曜日

ナチス、ヒトラーの映画の走り書き

新文芸坐
シリーズ「映画と歴史」① 映画に刻まれたナチスの爪痕
①帰ってきたヒトラー(2015・独/116分)
②アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発 (2015・米/98分)
③ハンナ・アーレント(2015・独=ルクセンブルク=仏/114分)
④アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち(2015・英/96分)
⑤手紙は憶えている(2015・加=独/95分/PG12)
⑥アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男(2015・独/105分)
⑦独裁者(1940・米/126分/35mm)
⑧終電車(1980・仏/131分/35mm)
⑨シャトーブリアンからの手紙(2012・仏=独/91分)
⑩ヒトラー暗殺、13分の誤算(2015・独/113分)
⑪奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ(2014・仏/105分)
⑫栄光のランナー/1936ベルリン(2016・米=独=加/134分)
⑬サウルの息子(2015・ハンガリー/117分)
⑭顔のないヒトラーたち(2014・独/123分/PG12)

あと、
「ヒトラーへの285枚の葉書」 
7/8~ヒューマントラスト有楽町、新宿武蔵野館

まだまだ、ナチス、ヒトラーを題材にした映画作品は作られ続け、上映も続く。

ちょっとメモ書きしておこうと思う。
有名なの、無名なのいろいろ。
特にお薦めのものも。

感じるのは、意外と偏っているってこと。
アメリカ(つまりハリウッド作品)、あとはイギリス、ドイツ、せいぜいフランス、イタリアくらいに。
もっと素直に、被害者に目を向けようとしないのだろうか?
まず最大に被害国であったソ連の作品を知る人があまりに少ない。
絶滅収容所の多くが存在した地、ポーランドの映画は、巨匠が多くて、さすがに知名度は高いとは思うが、上映機会はかなり限られるし、こういう機会で言の葉に挙がるのももっと多くてよかろうと思う。
チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィア(犠牲者の数はかなり多い)、ハンガリーも、そういう土地柄なのだから、当然あるだろうと想像つくでしょ?

比較的最近の作品群

「ヒトラー~最期の12日間~」
有名ですね。評価する人も多い。

「アイアン・スカイ」
個人的にはすごくお薦め。
このノリのフィンランド、好き。

「ヒトラーの忘れもの」
辛い。なぜ双子を出す?

「ワルキューレ」

「検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男」
法曹枠。

「シンドラーのリスト」

「ヒトラーの贋札」
個人的にはオデッサ枠。

「オデッサ・ファイル」
オデッサ(地名としては)関係ないけどオデッサ枠。

「マイ・ファーザー」
お薦め。観ていると暑苦しくて大変。クレッチマン枠。

「黄金のアデーレ」

「ヒトラー最後の代理人」

「野獣たちのバラード(ありふれたファシズム)」
鈴木瑞穂さんがナレーションの吹替え版観た。
移転前のアップリンク。観客は私だけでした!(平日昼間)

「マイ・リトル・ガーデン」
北欧映画祭で「バード・ストリート」というタイトルでやっていたのを観た。

北欧映画祭で「バード・ストリート」という題名で上映されたのを観た。(その後「マイ・リトル・ガーデン」名で一般公開)そのときの上映後質疑応答で「その原作は読んだことがある」という方がいて調べた。映画はレンブラントライトで割と美しく隠れ家を撮っていた。「戦場のピアニスト」子ども版みたいにワルシャワのゲットー内で子ども一人サバイバルする。映画だと冒険ものの要素が強くて(あと、サバイバルしてるとは思えないぽっちゃりした子が演じていたこともある)、原作の方が切実で大変。ゲットーの外でのサバイバルが同作者の「ふたつの名前を持つ少年」の原作『走れ、走って逃げろ』。
てわけで、
「ふたつの名前を持つ少年」

「1944 独ソ・エストニア戦線」
結構評判いい。
録画済みで未見。楽しみ。

「地下水道」「灰とダイヤモンド」「戦いのあとの風景」「サムソン」
ワイダまとめて。
「コルチャック先生」
美少年だったクラタくんどうしているんだろう。

「灰の記憶」
辛かった。
「縞模様のパジャマの少年」
「サラの鍵」
「黄色い星の子供たち」
「やがて来る者へ」
「ふたりのトスカーナ」
子どもが犠牲っていうのはこたえる。

「僕を愛したふたつの国 ヨーロッパ・ヨーロッパ」
「ソハの地下水道」
ホラントまとめて。

「ショア」
「ゾビブル」

「パサジェルカ」

「誰がため」

「ディファイアンス」
これより、プリーモ・レーヴィだな。
『今でなければいつ』とか。
『休戦』映画化したのが「遥かなる帰郷」
原作になかった、ソ連兵たちが戦勝記念パーティー向けに隠し芸の練習に余念ないのを救出されたユダヤ人たちが観ていて「上手いな!」とか言っているところが印象的。

「ソフィーの選択」
「夜と霧」
「海の沈黙」

「ブリキの太鼓」
「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」

「悪童日記」
原作がよかっただけに、映画はインパクト弱い。
是非入れて欲しかったのはおばあちゃんがユダヤ人たちに食糧を援助する場面だったが。あれは省くな!

「フランス組曲」
これも原作からのカット場面が多くて残念。

「さよなら子供たち」
「鯨の中のジョナ」
古典

「暗い日曜日」
「太陽の雫」

「名もなきアフリカの地で」

「ブラックブック」
お薦め。ミヒャエル・バラック似のゼバスチャン・コッホ枠。

「善き人」
「あの日 あの時 愛の記憶」
「アドルフの画集」
「わが教え子、ヒトラー」
「ドイツ零年」
「さよなら、アドルフ」
「あの日のように抱きしめて」
「敵こそ、我が友 〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜」
「愛を読むひと」
「コロニア」

「僕の村は戦場だった」
ブルリャーエフ枠。

「モレク神」
ヒトラーに似すぎているレオニード・モズゴヴォイだが、「ストーン クリミアの亡霊」ではチェーホフ、「牡牛座」ではレーニン演じているんですよ!信じられます?さすが役者だ。


「炎628」
デートで観に行くべきではなかった編。(帰路、互いに沈黙のままでした。)
これ、視覚だけじゃなくて、スープ(キャベツのスープじゃないかな)腐臭が漂ってくるような、泥沼ではぬめぬめした感触がしてくるし、五感に響いて、ぼろぼろになってしまう、”最強”の戦争映画。決して村の炎上シーンとラストの衝撃だけじゃないです。
でも、フリョーラ役のクラフチェンコは、このときは「あんまり美少年じゃないし、俳優続けそうにないな」と思ったんだけど、その後アクション映画によく出ている。社会性の強い作品には出ていなそうに思う。人の人生わからない。

「処刑の丘」
でもエレム・クリモフの奥さんであるラリーサ・シェピチコはもっと凄い。
忘れ難いのが、雪原のシーツの場面。
レジスタンスの二人が訪ねて食糧貰いに行こうとした(懇意にしている女性がいるはずだったのでは)村が、行ってみると、跡形もなく焼き尽くされている、のではなくて、無人の雪原に家の壁と干したシーツがあるだけっていう、鮮烈に白い白い場面。
村人の生活が突如断ち切られての虐殺を暗示させる。
ラスト、裏切者に対しての視線が容赦ない。

「海に出た夏の旅」
お薦め。
実はあんまりナチスは出てこないか(ドイツ兵はいる)。
でも、ソ連のストリート出身の可愛い子が大量に出演するので絶対お薦め。
アラノヴィチの、大好き「トルペド航空隊」とも甲乙つけがたい作品。


「英国王給仕人に乾杯!」
よりは
「厳重に監視された列車」
だな。

(勿論書きかけです)


ラビリンスで思い出す

AXNミステリーでチェコとスロヴァキアのミステリー「ラビリンス」が7回の連続で放映していて、ポーランドのミステリーの方も観ていたけれど、こっちの方がいい感じに思えた。

といっても、うわあ、残酷、もうやめて~というドラマなんだな。
ほぼ最初の方から、以前読んだ『プラハの深い夜』を想起させるストーリーだったが、最後までやはりそうだった。
(「ラビリンス」は現代のブルノが舞台で、『プラハの~』は第二次大戦中ドイツ占領下~解放にある一種の歴史性・政治性はない。ただ、スロヴァキアとの関係性については微妙かも。吹替えではなく、原語+字幕でも、タマラの話す言葉が周囲にはすぐスロヴァキア訛りとわかるらしい、それが聞き分けられる人は殆どいないんだろうけど、聴いてみたい気はする。)

あの暗澹たる後味の悪さ、アレクサンドラ・マリーニナのアナスタシアシリーズにも通じるけれど、コホウト作品(まあ、一つしか読んでいないけど)の気持ち悪さは、この時代の東ヨーロッパの混乱の世相も反映しているのかもしれないと思っていた。
一方で、シュヴァンクマイエルやイジー・バルタに通じる、”センスあるけど悪趣味!”なあの感覚がチェコ独特である気もする。

「ラビリンス」には、それが色濃くあった。

連続ドラマ「ラビリンス」を観ていると、昔読んだこの小説を思い出さずにはいられなかった。猟奇的で、気色悪く、かなり無駄に関係者が命を落とし、後味が悪い。
この作品の場合、それに加えて、最後の一行が最高にぞっとさせる。

2017年4月18日火曜日

コンサバな私には合わなかった本『ロシア文学うら話』

オデッサ・コスモス: ロシア文学うら話 (ユーラシア文庫)著者 : 笠間啓治群像社発売日 : 2017-02ブクログでレビ...: ロシア文学うら話 (ユーラシア文庫) 著者 : 笠間啓治 群像社 発売日 : 2017-02 ブクログでレビューを見る» 文学者の主にスキャンダルを羅列してある感じ。大学の講義の「脱線」の材料の集積だという。 こういう授業は聞...

あまりおもしろくない、というより読んでいて不快になるようなコネタ(セクハラ系)が多かった。
今さらの情報が殆どで参考になるようなものは少なかったが、これはメモしておこう。
ファジリ・イスカンデルの『牛山羊の星座』所蔵の短編『ぼくの伯父さんは恐ろしく四角四面の男だが』は、『エヴゲニー・オネーギン』の冒頭
Мой дядя самых честных правил,
の引用だったのね。

2017年4月16日日曜日

オデッサ・コスモス: ロシア革命 破局の8ヶ月

オデッサ・コスモス: ロシア革命 破局の8ヶ月: ロシア革命――破局の8か月 (岩波新書) 著者 : 池田嘉郎 岩波書店 発売日 : 2017-01-21 ブクログでレビューを見る»

オデッサ・コスモス: クリロフ事件著者 : イレーヌ・ネミロフスキー未知谷発売日 : 2014-05ブクログでレビューを見...

オデッサ・コスモス: クリロフ事件著者 : イレーヌ・ネミロフスキー未知谷発売日 : 2014-05ブクログでレビューを見...: クリロフ事件 著者 : イレーヌ・ネミロフスキー 未知谷 発売日 : 2014-05 ブクログでレビューを見る» 帝政ロシア下の高官暗殺者の一人称語り。 どうもサヴィンコフ(ロープシン)の『蒼白き馬』に重ねてしまう。 高官クリコフも暗殺者レオン・Mも行動も思考も、本物のテロリス...

変な?固有名詞メモ
ピエール・エ・ポール監獄
ヴィクトリア・サルティコフ
アレシクス皇子
ボルシェヴィキ
ミカエル大公
グレゴアール・セメノフ

ネルロード皇子 この人は創作?
パヴロフスクのクルサール音楽堂

劇映画監督制作のドキュメンタリー作品

ベールィエ・ストルブィ映画祭レポートの続き

標題の特集の作品の中では、グリゴリー・チュフライ監督の「記憶」"Память"1970年を挙げられていた。
スターリングラード攻防戦について、パリ・ロンドンでは結構忘れられている(というより元々認知度が低かったのでは?さすがにそれはないか)が、ドイツでは肉親の戦死等体験として深く刻まれている、というものらしい。
現在では、スターリングラード戦についての劇映画もむしろ活発に作られているような。
クレッチマンはドイツのとロシアのと両方出演しているし。
私が洗礼を受けた90年、当時の伝道師が(夫を天に送った後神学校に入って聖職者となった、珍しい経歴の女性で、文学少女の趣が強く、私はこの先生の説教が好きだったのだが)説教の中で「スターリングランドの戦いでドイツ兵は…」とおっしゃっていて、皆も受け流していたので、歴史用語としても日本ではあんまり知られていないのかと思ったが。
「誓いの休暇」「君たちのことは忘れない」等、あの大戦(ソ連では大祖国戦争と呼ぶ)の従軍体験のある世代の巨匠、戦争については英雄が勇敢に戦うのではない、胸が締め付けられるような愛しい人たちが戦う様子を描いたあの監督が、作ったドキュメンタリー、観てみたい。

なお、この特集ではセミョーン・アラノヴィッチ監督の「今夜はプレミア」上映もあったようだ。
アテネ・フランセで観たと思う。
キリル・ラヴロフさんがチェーホフ劇に出演する。