2021年8月31日火曜日

スペードの女王

 シネマヴェーラで貯まったポイントで「恐ろしい映画」特集の「スペードの女王」観てきた。1949年イギリス映画。1960年ソ連のオペラ映画と違ってプーシキンの原作による。モノクロながら当時のペテルブルクの貴族生活の一端を丁寧に描いているのではないか。心理描写は乏しく大して怖くはないが佳作。

ソ連のオペラ映画(ロマン・チホミーロフ監督)「スペードの女王」は今は亡きBOX東中野で観てその後アテネ・フランセとかでも観たかも。伯爵夫人も発狂するゲルマンも気合が入りすぎてるくらいだったが、今回のはリーザを巡る若者たちの関係が可愛らしい感じ。それと貴族社会の出世街道は大変そう。

英語の「スペードの女王」でも構わないのだがプリンス・プリンセスを王子・王女とする字幕はちょっとな。リーザが伯爵夫人を「アナ」と呼んでいることにもなってるし(元の台詞ではアンナ・イヴァノヴナ(だったか)と父称付きで呼んでいる)

伯爵夫人、プーシキンの短編ではそんなに身分が高く社交界で力を持っているようにも思えなかったのだけれど、『戦争と平和』のアンナ・シェーレルみたいに引き立ててもらいたい男性たちがご挨拶ににじり寄って来る。大体辛辣にあしらうのだが親戚筋なのかパーヴェルと彼が紹介した近衛兵のアンドレイくん(いい人)だけはお気に入り。

アンドレイくんはリーザにもゲルマンにも優しくて、その点伯爵夫人には人を見る目があったんだな、と思う。しかし若い頃と人が違ったように横暴な老女になってしまう。なぜ夫人が賭けで大金を得たのか(その必要があったのか)なんとも合理的なわかりやすい描写がされていた。(ほぼプーシキンの原作の筋書き通りの1949年版だが、この点は違う。後述の文庫で確認したが、原作では賭けですった大金を賭けで取り戻すのだが、ここでは違う要素が入って来る。)

※このイギリス映画の方の「スペードの女王」はDVD化されていた。

※プーシキンを読み直そうという気になったのだが、文庫では2005年の岩波が最新?と思ったら光文社古典新訳文庫は『スペードのクイーン』というタイトルになっていた。

※伯爵夫人の名前はプーシキンだとアンナ・フェドートヴナのようだが、この映画ではアナ・イヴァノヴナ(だったと思う)・ラフネスカヤだった。





2021年8月23日月曜日

サーリネンとフィンランドの美しい建築展

 4時半の予約だったがたっぷり観て気がつくと閉館の音楽が。1時間半食い入るように観てしまった。

新橋はパナソニック美術館のあるビルに着いたのが実は3時半で、同じビル内のパナソニックのショールームを自由見学させていただいた。キッチン・洗面所・バスルームとか、どんどん進んでいるんだな、と。食器洗浄機欲しいな。

ただ、ショールームは地下2階受付で地下1階との2フロアのみになっていた(1階が閉鎖)。



フィンランド関係の展覧会はテキスタイルとか時々観に行っていたけれど、建築は初めて。
フィンランドにはウクライナ旅行の経由地としてヘルシンキの空港近くのホテルに泊まったきりで街中を観ることは叶わなかったので、何とも残念。
どんな建築物が?と事前にオンラインギャラリートークで予習はしていた。

展示は結構丹念に観ていったつもりだけど、スライド展示が多かったのでとても全ては通して観ることはできなかった。
メーリニコフ展の時みたいに多数の模型で圧倒!ということはない(模型はパリ万博のフィンランド館だけ(1-15))が部屋の再現がいくつかあってわくわくする。今度はスライドしっかり観るために再訪したい。(9/20まで)

7月25日にオンラインスライドトークを視聴した時のメモにロヤがサーリネンの2番目の妻とあって、カタログの年表で確認したら最初の妻マティルダとは1899年に結婚してパリ万博には彼女との新婚旅行で行っている。1904年離婚。マティルダは後にゲゼリウスと再婚しているのだがゲゼリウスはサーリネンと長く共同で建築設計事務所やっていた人で、サーリネンの2番目の妻ロヤはゲゼリウスの妹。しかもヴィトレスクに作った事務所兼共同住宅に両夫妻とも入居している。別れた元妻が義理の姉っていう。複雑ですな。

展覧会の中では特に説明はなかったが、サーリネンは2歳でイングリア(イジョラ)に引っ越しペテルブルグをよく訪れとりわけエルミタージュで一人過ごすことが多かったと、カタログ冒頭の記事にある。当然ロシア語は話せた。家庭言語はフィンランド語とスウェーデン語か。
前述のゲゼリウスはドイツ系。もう一人の建築設計事務所パートナーのリンドグレンはスウェーデン系なのだろうか?(著名な児童文学者とは親戚関係はないようだ。)

キャリアのスタート時には時代の雰囲気もあって、フィンランドの伝説に基づくキャラクターの彫像が置かれる建築物などが多く、それもあってこの展覧会のプロローグは「民族叙事詩カレワラ~作品創造の源泉として」でアクセリ・ガレン=カレラによるカレワラの挿絵本・エッチング・ドローイングの展示。サーリネンはカレラとずっと交友を深めている(シベリウス等の著名人とも)。けれど、フィンランド最後の仕事カレワラ会館については批判を受けたとキャプションにあった。カレラとしてはカレワラについてこだわりがあったのだろうな。

フィンランドの独立運動期の1900年パリ万博フィンランド館、ポホヨラ保険ビル、フィンランド国立博物館といった作品群、そして芸術家コミュニティ、ヴィトレスクでの生活。ウィリアム・モリスらの提唱したアーツ・アンド・クラフト運動の影響が明らか。実に広々としてきれいでそれでも生活感はそこはかとなく滲み出る写真。家の空間感覚が違うな。
実はゲゼリウスやリンドグレンは割とすぐにこの地での共同生活を解消して去っているのだけれど、サーリネン一家はアメリカ移住するまでこの地に留まり、また移住後も夏の別荘として頻繁に戻って来る生活だったという。

その後のゲゼリウス・リンドグレン・サーリネン建築設計事務所作品ヴィープリ(現レニングラード州ヴィボルグ)のスール=メリヨキ荘(1904年)が現存しないのが残念。戦災で消失したのだろうか?※
オーナーのペテルブルグの実業家マクシミリアン・オトマール・ノイシェレルМаксимилиан Отмар Нойшеллерはどんな人なんだろう?
これによるとノイシェレルはスイス人だったようだ。(ネヴァ川のカメニ島に別の邸宅もあったが、こちらも現存していない。)
こちらによると戦争で被災(いわゆる大祖国戦争ではなくて第一次大戦なのか?)はしたが、建物の解体は戦後だったとのこと。中にあった彫像は無事でフィンランドのヤルヴェンパーにある。

3-52カイルクネル邸のドアカーテン(1918年)には”AK 1918”との文字が書かれている。1918は製作年だろうがAKは何だろう?

こちらは息子のエーロ・サーリネンがデザインしたカンファレンス・チェア
(サーリネン展で唯一撮影可、座ってもいい)
ああ、これはいかにも北欧家具的で心地よさそう。

こちらはルオー・ギャラリーでルオー生誕150周年記念のフォトスポット。
「マドレーヌ」1956年油彩
マグダラのマリア或いは聖書由来の名をつけられたサーカス芸人がモデルか。
素敵な笑顔。主の恵み深さが感じられる。

次回の展覧会も楽しみ。

2021年8月13日金曜日

録画メモ

 1.「ジェヴォーダンの獣」

若き日のジェレミー・レニエ

2.「母との約束、250通の手紙」

録画メモ

 1.「マルモイ ことばあつめ」

新宿でやっていたときに観逃がして、Twitterでフォロワーさんからの推しで上映館を探し、ちょっと気が咎めたが渋谷のアップリンクで未来チケットを使って観た。

エンターテインメント要素盛り込みつつのさすがの韓国映画。

2.「案数殺人」

録画メモ

1.「時の翼に乗って/ファラウェイ・ソー・クロース!

「ベルリン 天使の詩」続編でしたね。ゴルバチョフさんが自身の役で出演している。

2.「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」

EUフィルムデーズでは「キオスク」名で上映された後、一般公開された作品

2021年8月12日木曜日

社会を変えた50人の女性アーティスト(がっかり)

 タマラ・ド・レンピッカもフリーダ・カーロも同じに見える。

だいぶ期待外れ。『女性科学者たち』『女性アスリートたち』だったらよかったかもしれないが、著者イグノトフスキーのイラストが可愛くまとまってるだけに取り上げている個々のアーティストの個性が(少なくともイラストからは)全く伝わらない。イラスト集・図録ではなく百科事典のような編集のもので読み直したい。

50人の人選は恐らくかなり偏っており、著者がアメリカ出身なので南北アメリカの人が多い。当然知らないアーティストが多く、それはおもしろいのだが…。
”社会を変えた”という基準のあてはならなかったのか?マリー・ローランサンやカミーユ・クローデル、ココ・シャネルなどがいないし、綺羅星の如く時代を駆け抜けたアヴァンギャルドの女性達(ゴンチャロワ、ステパノワ、パノワ、ロザノワ、エクステル等々)を一人も入れていないのは解せない。日本人アーティストでも丸木俊やいわさきちひろは確実に社会を変えたと思うがそれより草間や妹島なのだから反米っぽい人はあからさまに避けているのかも。