2021年8月23日月曜日

サーリネンとフィンランドの美しい建築展

 4時半の予約だったがたっぷり観て気がつくと閉館の音楽が。1時間半食い入るように観てしまった。

新橋はパナソニック美術館のあるビルに着いたのが実は3時半で、同じビル内のパナソニックのショールームを自由見学させていただいた。キッチン・洗面所・バスルームとか、どんどん進んでいるんだな、と。食器洗浄機欲しいな。

ただ、ショールームは地下2階受付で地下1階との2フロアのみになっていた(1階が閉鎖)。



フィンランド関係の展覧会はテキスタイルとか時々観に行っていたけれど、建築は初めて。
フィンランドにはウクライナ旅行の経由地としてヘルシンキの空港近くのホテルに泊まったきりで街中を観ることは叶わなかったので、何とも残念。
どんな建築物が?と事前にオンラインギャラリートークで予習はしていた。

展示は結構丹念に観ていったつもりだけど、スライド展示が多かったのでとても全ては通して観ることはできなかった。
メーリニコフ展の時みたいに多数の模型で圧倒!ということはない(模型はパリ万博のフィンランド館だけ(1-15))が部屋の再現がいくつかあってわくわくする。今度はスライドしっかり観るために再訪したい。(9/20まで)

7月25日にオンラインスライドトークを視聴した時のメモにロヤがサーリネンの2番目の妻とあって、カタログの年表で確認したら最初の妻マティルダとは1899年に結婚してパリ万博には彼女との新婚旅行で行っている。1904年離婚。マティルダは後にゲゼリウスと再婚しているのだがゲゼリウスはサーリネンと長く共同で建築設計事務所やっていた人で、サーリネンの2番目の妻ロヤはゲゼリウスの妹。しかもヴィトレスクに作った事務所兼共同住宅に両夫妻とも入居している。別れた元妻が義理の姉っていう。複雑ですな。

展覧会の中では特に説明はなかったが、サーリネンは2歳でイングリア(イジョラ)に引っ越しペテルブルグをよく訪れとりわけエルミタージュで一人過ごすことが多かったと、カタログ冒頭の記事にある。当然ロシア語は話せた。家庭言語はフィンランド語とスウェーデン語か。
前述のゲゼリウスはドイツ系。もう一人の建築設計事務所パートナーのリンドグレンはスウェーデン系なのだろうか?(著名な児童文学者とは親戚関係はないようだ。)

キャリアのスタート時には時代の雰囲気もあって、フィンランドの伝説に基づくキャラクターの彫像が置かれる建築物などが多く、それもあってこの展覧会のプロローグは「民族叙事詩カレワラ~作品創造の源泉として」でアクセリ・ガレン=カレラによるカレワラの挿絵本・エッチング・ドローイングの展示。サーリネンはカレラとずっと交友を深めている(シベリウス等の著名人とも)。けれど、フィンランド最後の仕事カレワラ会館については批判を受けたとキャプションにあった。カレラとしてはカレワラについてこだわりがあったのだろうな。

フィンランドの独立運動期の1900年パリ万博フィンランド館、ポホヨラ保険ビル、フィンランド国立博物館といった作品群、そして芸術家コミュニティ、ヴィトレスクでの生活。ウィリアム・モリスらの提唱したアーツ・アンド・クラフト運動の影響が明らか。実に広々としてきれいでそれでも生活感はそこはかとなく滲み出る写真。家の空間感覚が違うな。
実はゲゼリウスやリンドグレンは割とすぐにこの地での共同生活を解消して去っているのだけれど、サーリネン一家はアメリカ移住するまでこの地に留まり、また移住後も夏の別荘として頻繁に戻って来る生活だったという。

その後のゲゼリウス・リンドグレン・サーリネン建築設計事務所作品ヴィープリ(現レニングラード州ヴィボルグ)のスール=メリヨキ荘(1904年)が現存しないのが残念。戦災で消失したのだろうか?※
オーナーのペテルブルグの実業家マクシミリアン・オトマール・ノイシェレルМаксимилиан Отмар Нойшеллерはどんな人なんだろう?
これによるとノイシェレルはスイス人だったようだ。(ネヴァ川のカメニ島に別の邸宅もあったが、こちらも現存していない。)
こちらによると戦争で被災(いわゆる大祖国戦争ではなくて第一次大戦なのか?)はしたが、建物の解体は戦後だったとのこと。中にあった彫像は無事でフィンランドのヤルヴェンパーにある。

3-52カイルクネル邸のドアカーテン(1918年)には”AK 1918”との文字が書かれている。1918は製作年だろうがAKは何だろう?

こちらは息子のエーロ・サーリネンがデザインしたカンファレンス・チェア
(サーリネン展で唯一撮影可、座ってもいい)
ああ、これはいかにも北欧家具的で心地よさそう。

こちらはルオー・ギャラリーでルオー生誕150周年記念のフォトスポット。
「マドレーヌ」1956年油彩
マグダラのマリア或いは聖書由来の名をつけられたサーカス芸人がモデルか。
素敵な笑顔。主の恵み深さが感じられる。

次回の展覧会も楽しみ。

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