2016年7月11日月曜日

EUフィルムデーズ(その1)

EUフィルムデーズ 今年は新たにとんでもない名作というのには出会わなかった。観て損した感の駄作もいくつか。日本語字幕無しの際、解説のハンドアウトが配布されたのはこれまでずっとアンケートに書いてきた甲斐があった。今年はユーロと日程がしっかり被って大変だった。次回からはやめて!
印象深かったのはルーマニア「日本からの贈り物」、ドイツ「ロストックの長い夜」、ポルトガル「ボルドーの領事」、ハンガリー「リザとキツネと恋する死者たち」

1.アイルランド「ジミー、野を駆ける伝説」★★★★
昨年公開時にも観たので2回目。イングランド人ケン・ローチによるアイルランドの実在の活動家についての作品。ケン・ローチ、好きなんだけど「自由と大地」にせよ「ブレッド・アンド・ローズ」にせよ「ルート・アイリッシュ」にせよ、カントナ出演の「エリックを探して」にせよ、やや暴力的解決方法を肯定しかねないような傾向に危惧を感じてきたのだけど、アイルランド内部での政治的立場の違いからの紛争という難しい問題を扱いながら、この作品は以前よりもそういう傾向が薄く、若い世代への信頼にも満ちているようでほっとする。

2.イタリア「ローマに消えた男」★★
不人気野党党首が仕事を投げ出して失踪…って「ローマ法王の休日」みたいな設定だな。イタリアってこういうのが許されるのか?あと、イオセリアーニの「月曜日に乾杯」とかも。特に、元カノ一家優しすぎるよ。

3.イギリス「ハムレット」★★★
舞台(アリーナ形式だったようだ)を8台のカメラ駆使して撮影。日本語字幕がないものは行かないつもりだったけど、ハムレットだし、英語字幕がつくことになったので、何とかなるかなと思って観に行った。女優マキシン・ピークがハムレットを凛々しく演じ(といってもハムレットが女性だったという設定ではない)、ポローニアス、ローゼンクランツは女性に設定変更、という話題の舞台。皆さん流石の演技の本場のシェイクスピアだった。でも、告白すると時々「この人、ホレイショー?レアティーズ?」などと混乱した。数年後にはこうした野心的作品を送り込むイギリスがEUフィルムデーズの場に登場しなくなるのかと思うと非常に惜しい、惜しくてならない。

4.エストニア「チェリー・タバコ」★
同日に観たフィンランド作品と同種のガールズ・ムービーだったが、そちらと比較するとかなり見劣りした。ヒロインが可愛く魅力的だった。お相手の男性はダメンズだったが、いや、それでも人間、それぞれ活躍する場ってもんがあるんだよね。

5.オーストリア「壁」→未見

6.オランダ「提督の艦隊」★★★
スクリーンで観るべき映画。祖国の英雄ミヒール・デ・ロイテルを讃える歴史大作。史実かどうか随分とよき家庭人だったかのような描かれ方だった。主人公や部下たちは海賊みたいな荒くれ者。オラニエ公ウィレムが一見気弱実は狡猾な、悪い意味で政治的な人物に描かれていた。海戦場面は平凡ながら勇壮。海上のフォーメーションチェンジが素敵。オランダ絵画のように美しいシーンが多いが暴動場面等はグロい。これもオランダ絵画並みか。

7.ギリシャ『センチメンタリスト』→未見

8.クロアチア「カウボーイたち」→未見

9.スウェーデン「アヴァロン」★
深刻な事態(ネタバレしたくないが「イゴールの約束」っぽい事態)にもなぜか他人事対応な主人公、そこで踊るか?!インド映画か?(スウェーデンです)の展開、脱力系ミュージックの中の謎のフィナーレ。北欧の感覚はぴんと来ない場合が多い。

10スペイン「SPY TIME スパイ・タイム」★★★
ヒューマントラスト渋谷の「未体験ゾーンの映画たち」で上映していたのか。やや無駄に残酷シーンの多いスパイ・コメディー。まあ、おもしろいっていえばおもしろいんだけど、今どきこんな無邪気な作品は実は許されないのでは?と他国のことながら心配してしまう。

11スロヴァキア「ラブ&マネー」→未見

12スロヴェニア「樹」★★
思いっきりイスマイル・カダレの『砕かれた四月』だった。つまり後味が悪かった。

13チェコ「家族の映画」★
最近のチェコ作品はバブリーな中流家庭の虚無感を描くものが続いているように思えるが、去年の美少年登場映画「海に行こう」の方が好み。オットー(犬)は熱演だったけど登場場面長すぎ。それぞれのキャラが薄っぺらく雑然として、これまで観た中で最低のチェコ映画。そうか、チェコ映画にも駄作はあるのか。

14デンマーク「特捜部Q キジ殺し」→未見

15ドイツ「ロストックの長い夜」★★★★
92年に旧東ドイツの町で起こった外国人襲撃事件という実話を、襲撃した若者、父親の市議、襲撃される側のベトナム人女性の3つの視点で、アフガニスタン系移民2世の監督が描いた。日本語字幕がついていたがハンドアウト配布あり。ネオナチに足を足を踏み入れる男女は特に底辺というわけでもなさそう(ただ仕事はなく、閉塞感に苛まれている)。傍観する、というよりネオナチを煽る一般市民の群れが恐ろしい。

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