2017年3月21日火曜日

オデッサ・スタジオ: 一部屋半 あるいは祖国への感傷旅行

阿佐ヶ谷のロシア雑貨のお店「パルク」さん及び沼辺信一さんのお誘いで、
「一夜限りの傑作ロシア映画ナイト!第5回:一部屋半~あるいは祖国への感傷旅行」&スペシャル企画「沼辺信一氏トークイベント」
を申し込み、無事参加することが出来ました。
なので、以前書いたレビューの補筆。
だいぶ適当なことを書いていたわ。反省。


オデッサ・スタジオ: 一部屋半 あるいは祖国への感傷旅行: 少年は後に詩人となってレニングラードをうたう。 徒食の罪で刑事事件の被告人となる。 ノーベル文学賞を受賞する。 亡命する。 そして二度と故郷レニングラードには戻らない。 そんな詩人の魂がかの地に帰郷したとして、ソ連~ロシアアニメーションの大御所アンドレイ・フルジャノフ...


これ、亡命(実質国外追放)の後にノーベル賞受賞だったし。

♪音楽
ショスタコーヴィチ、チャイコフスキー、マーラー、バッハなどのクラシック(といってもショスタコーヴィチなどは同時代の作曲家で自身も登場しちゃうが←下記参照)もふんだんに効果的に使われているけれど、ここでは歌謡の方を言及。
お料理本からの妄想シーン、スターリン似?のシェフがご馳走を少年ヨシフに見せる際に流れている曲はグルジア民謡の「スリコСулико」だった。大好き「トルペド航空隊」の挿入歌でもある。
スリコという名の若者が戦いに行ってしまって、戻って来ないよ~と残された恋人が嘆く歌詞なので、「トルペド航空隊」の中で歌われるとほんとにぐっときてしまうのだけれど、この作品中ではシャシリクとかのグルジア料理だからこの曲を使ったのでは。
でも軽く哀愁のあるあのグルジアの響きがたまらない。素敵な曲。
今日の観客にはロシア歌謡のオーソリティーもいて、挿入歌「黒い瞳」について教えていただいた。
亡命後のヨシフが当地のパーティーの場で歌う「黒い瞳」、私は彼流の替え歌なのかと思っていたが、ロシア歌謡オーソリティーによれば、歌詞の比較的新しいバージョンである由。(元の歌詞にシャリャーピンが2番を加え、別の歌手がまた別ヴァージョンを作り…という具合に、自分に合わせた歌詞ヴァージョンがいくつかあるのがロシア歌謡のあり方なのだ。)

♪猫
猫好きヨシフ・ブロツキーは有名(検索すると猫抱きフォトショットぞろぞろ出てくる。特に愛猫ミシシッピ。このアニメーションの猫のモデルでもありそう)だけれど、フルジャノフスキー自身も猫好きのようだ。
一部屋半」や「猫1.5匹」に登場する落書き風猫は、実際ブロツキーの落書きを元にしている。
ヨシフとお父さんが猫語で会話していて(ロシア語訛りの猫語??それとも猫語訛りのロシア語か?)お母さんに叱られるシーンが何度かあるが、これも実話でブロツキーがエッセイ「一部屋半」に書き残している。

♪ショスタコーヴィチとサッカー
ショスタコーヴィチ登場シーンだけど、その前に少年たちが通りで草サッカー(草はありません)、お父さんが建物の説明してくれる場面を経て、スタジアムでの恐らく実際のサッカーの試合、観客に交じって応援を送るヨシフ達、サポーターたちの写真。
ここで有名な二枚の写真(25:43,25:44)、嬉しそうなショスタコーヴィチの人生で一番の笑顔じゃないかというこの2枚の写真が「一部屋半」に盛り込まれている。
http://www.sobaka.ru/images/image/00/49/56/00/_normal.jpg
http://dynamo.kiev.ua/media/swfupload/2016/09/yayaya_11.jpg
ショスタコーヴィチはサッカー好きが高じて、審判の資格をとろうとまでしていたというが(ウィキなどには「持っていた」と書かれているけれど、さすがに多忙のため断念したと『ロシアサッカー物語』にはあり、むしろこちらの方が信憑性が高いと思われるので、こちらをとる。ウィキは何を根拠にしているのか不明。)、そのときのショスタコーヴィチがポケットに差し込んでいる新聞には、審判・裁判も見出し語が見える。
レニングラードのユダヤ人医師団陰謀事件を想起させるような…。

♪フィギュアスケート
これも実話なのかな?
ヨシフのお父さんはフィギュアスケートファンらしく、いつもTVでフィギュアスケート、それもペアの演技を観ている。
たぶんロドニナじゃないかな。
人生最後の瞬間までフィギュアスケートを楽しんでいたのだった。
サッカーだって、ヨシフをよくスタジアムに連れて行ってくれたというから、好きではあったのだろうけど。
ショスタコーヴィチを見かけると、「すみません、スコアはどうでしたか?」と挨拶する。
ほんとは試合結果なんて知っていたんじゃないかな。
でも、家ではTV観戦していないんだよね、このお父さん。
観ているのはいつもフィギュア。

♪鴉
一部屋半」で忘れていたことと言えば、2羽のカラス。動きがとってもノルシュテインっぽかった。なんとも愛らしい。「話の話」とか「アオサギとツル」みたい。2羽はご両親の幻影であるようだ。
沼辺さんに教えていただいたが、母の死後に1羽、父の死後にもう1羽現れた鴉のエピソードはブロツキーのエッセイ集『一部屋半』にそっくり出てくるとのこと。
未だ邦訳はなく、ネットではこれが購入できる。

♪雪解けの青春
みんなして「リリー・マルレーン」歌う。

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