アガタ・クレシャはポーランドの女優で「イーダ」ではヒロインの伯母で”赤いヴァンダ”と呼ばれた共産主義に忠実な検察官を演じていたし、去年観た「ルージャ/薔薇」では少数民族マズールィのヒロインを熱演していた。
今日観たポーランド・フランス合作映画「夜明けの祈り」"Непорочные"では女子修道院長役。
圧倒的存在感である。
修道院がどういうヒエラルキーを持っているのかよくわからないが、院長に準じるような役割をしている修道女マリア(ストーリーの都合上フランス語が達者。上流階級の出身という設定か)を演じるアガタ・ブセクは特徴的な美貌の持ち主で、プログラムを読むまで思い出せなかったが、私がワイダ作品の中で最も好きな「仕返し」のヒロインで、最近ではスコリモフスキの「イレブン・ミニッツ」にも出演していたと。
その他修道女のポーランド女優は清楚な美女が溢れていていい。
ナチス・ドイツ敗退後ポーランドを占領したソ連兵が各地で狼藉を働き、女子修道院にも押し入って修道女たちをレイプして妊娠させた(加えて性病を感染させたりもした)。
彼女らの出産が近づき、修道女マリアが思い余ってフランス赤十字の女医マチルドに助けを求め、マチルドは最初は断るけど助けざるを得ない…
監督・撮影監督とも女性で、いい映画だけど、フランス人が他国のことを撮った映画にありがちな上から目線が感じられることは引っかかる。
修道女と子どもたちを救った彼女の行為は尊いが、ユダヤ人にビザを発行して救った杉原千畝の行為を日本人(一般が)偉かったイメージで報じるのと同様の路線になってしまうとあれだなあと思う。
ポーランド人監督が撮ったら(それこそホラントとかケンジェジャフスカとか)よかったのではないかなあ。
マチルドは親が共産党で自身は党員ではない(けれど多分に無神論者っぽく、修道女たちの思考や行動には違和感を持つ)設定で、労働者階級で苦労して医者になった人として描かれているが、モデルになったマドレーヌ・ポーリアックは戦中はレジスタンスに身を投じていたとある。
多少濡れ場はあるものの、余分なメロドラマがないのは清々しい。
(たぶん女性監督だからあっさりしているのだと思う。よかった。)
映画では任務終了後帰国して修道院から報告を受けるところで終わっていたが、実話はより悲劇的で1946年2月にワルシャワで事故死しているという。
…というと、アグニエシュカ・ホラントの「ソハの地下水道」主人公のソハみたいな最期だったのか。
戦争中や戦後のポーランドにおける女性の受難、特に強姦の被害者という点に焦点をあてたものとしてはやはり「ルージャ/薔薇」の方が強烈で且つきめ細かかった。
思うに、監督の思うところはマチルドにかなり投影されていて、こんなときに信仰心に拘っているなよって言いたげに思え、修道女の信仰や行動様式には割と冷めた目て見ていると思う。
でも、この撮影監督さんは好きだなあ。
白樺林の場面はとても綺麗だ。
あと、やはりソ連兵の描かれ方は酷い。
ソ連兵の狼藉に関して、仕方なかったとか何が悪いという認識なのだろうか、当人たち及び現在の国民は。
昔も今もきちんとした反省はしていないように思うが、そんなことでこの先もいいのか。
それともどこかの国みたいにそんなことはなかったと主張するのだろうか。
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