2021年11月14日日曜日

Память, говори! メモリアルの危機

Twitterで「不当逮捕された時は国民救援会を」という話題が今更のように挙がっている。

国民救援会については祖母が生前熱心に活動していた(市内の団体・個人にカンパを集めに回って~自分では運転できないからドライバー役の男性を従えて、って感じで~、今では考えられないかもしれないが市長や助役からもカンパを貰っていた(※一貫して保守市制だったにもかかわらず!))けれど、母ともどもそんなに熱意を持ってやっているわけではなく、会費を払ってせいぜい年に3回のカンパには応じているくらいで『救援新聞』も実はろくに読んではいない。

それでも救援新聞の毎号の1面をチラ見するだけでも、救援会が扱っている活動は

1.冤罪裁判支援(先日の最高裁裁判官国民審査でも、冤罪事件再審開始を妨害した裁判官についての資料を機関紙「救援新聞」から得た)

2.政治弾圧事件救援

3.人権侵害・政治弾圧に対して闘った人達の記録・顕彰

なのだろうなということはわかる。(カンパ集めが夏冬のボーナス時に加えてもう一回あるのは毎年3月18日に行われている❝解放運動犠牲者❞の合同追悼会に向けてのカンパがあるからだ)

人権侵害・政治弾圧に対して闘った人達を❝解放運動犠牲者❞と呼ぶのは、特高警察によって虐殺されたプロレタリア作家の小林多喜二、岩田義道、野呂栄太郎あたりならともかく、治安維持法がなくなった現在、あからさまに弾圧を受けたというのではなくても「人類の平和と自由のために活動して生涯を終えた人」全般のことを指しているわけだけれど、言葉がなんというか壮大に感じられるかもしれない。しかしまあ、私はごくごく緩いことしかしていないが、現在でも覚悟を持って信念に基づいてコミュニストであることを貫いたり、労働組合の本来の役割を果たそうとしたり、差別に対して否と言い続けることは、❝解放運動犠牲者❞であると言ってしまってもいいくらい大変なことなのだろうと思う。

国民救援会は❝解放運動犠牲者❞の合同追悼会を主催しているが、治安維持法犠牲者達の名誉回復・賠償を求める活動をしているのは『治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟』で、母はこちらの方は真面目にやっている(それも最近になってのことだけど)。

政治弾圧、特にファシズム・独裁に抗する運動、反植民地活動によって受けた被害への謝罪や補償は「世界各国で進む」と、同上の同盟が進めている「治安維持法犠牲者に国家賠償法の制定を求める請願」の署名用紙には書いてあり、

*ドイツ:ナチス犠牲者に年金支給

*イタリア:反ファシスト政治犯に終身年金支給

*アメリカ:第二次大戦集強制収容された日系人に大統領が謝罪、一人当たり2万ドル支払い

*スペイン:フランコ独裁犠牲者の名誉回復と補償

*チリ:ピノチェト軍事政権下の犠牲者と家族に年金支給、子弟に奨学金

*韓国:日本の植民地支配と闘った「愛国者」表彰、年金支給

*オーストラリア:先住民に対する差別・虐待を謝罪

*イギリス:ケニア反植民地運動弾圧に対する補償

という各地の状況が挙げられている。

時の政権による弾圧・人権侵害について、後の政権が謝罪して、犠牲者の名誉回復を行い、金銭的にも補償をするという流れは、ものすごく悲しいことに日本では行われていない。なので、母を含めて犠牲者家族らはずっとずっとずっと謝罪と賠償を求めている。しかしとても悲しいことに普段も選挙時も殆ど話題にもニュースにもならずスルーされっ放しだ。治安維持法が人道に反する悪法だったことを、まずは認めるべきだが、それを認めると謝罪と補償という話になるからか、それすらやらないというのが日本という国だ。

こういうときに持ち出すのはこれまた悲しいのだが、中国も「文化革命」犠牲者への名誉回復はやっているし、ロシアもソ連時代の粛清犠牲者に対して名誉回復と謝罪は(当人たちにとっては極めて不十分で莫大に手間がかかる手続きを経るようではあるが)やっているのに、日本はそれら以下です!!!

という感じの流れで今まできた。

そしてロシアで粛清をはじめとする政治弾圧の犠牲者の掘り起こしや顕彰、というより記憶に刻む地道で膨大な作業を進める中心的な役割を果たしてきたのがメモリアル(Мамориал)という人権団体である。

こちらのデータバンク、『囁きと密告 スターリン時代の家族の歴史』を読んだ際に、有名サッカー選手イーゴリ・ネットの兄弟レフ・ネットのことを検索してみたことがある。→ここ

このメモリアルが危機に瀕している。

ここへ来て、ロシア社会の締め付けが進んで、ここまで退潮してしまうのか、というのはまたまた大ショックだ。まさかここまで、と私の想像力を超えてしまう。(こんなところ、日本に似ないでくれ…というか、競い合って一緒にだめになっていっている)




半年くらいかかったか。
やっとやっと、『囁きと密告 スターリン時代の家族の歴史』上下2巻を読み終わった。

レフ・トルストイの大河小説よろしく、500人もの人々が登場する、ソ連を生きた人たちの歴史であって、感想を述べるのはほんとうに難しい。

普通の人たちもたくさん登場するが、作家・俳優・映画監督等知識人たちも大勢出てくる。
最も登場回数が多いのは作家のコンスタンチン・シーモノフ。
端的に言うと、スターリン時代を生き抜くために身近な人(妻・娘も含めて)を見捨てた人であり、仕方なかったのかもしれないが酷いなあ…と舌打ちしたくなる人物だったのだが、晩年は案外誠実に自らの過ちに向き合ったようで、少々救われた思いに至る。

著名なサッカー選手イーゴリ・ネットの兄、レフ・ネットは下巻からの登場で、本文では2箇所、しかし著者あとがきでもスペシャル・サンクスに名前が挙がる。
彼は、「名誉回復」申請を、積極的に拒否したという(下巻405ページ)。
我々に対し犯罪を犯した国家に、名誉回復を請い願うなんてナンセンス!というわけだ。
レベラヴなんだね。カッコいい。
(勿論、名誉回復を申請するのも当然の権利である。)

https://kirakocma.blogspot.com/2012/03/blog-post_7515.html

0 件のコメント:

コメントを投稿