2021年4月18日日曜日

サイレント映画に輝きを ピアノdeシネマ「カメラを持った男」

 前々からジガ・ヴェルトフは苦手だと書いていたが、サイレントではなくて音が入ることでこんなに見え方が違うのか!と発見した、柳下美恵さんの「ピアノdeシネマ」アップリンク渋谷卒業の回、「カメラを持った男」

嫌いではないがサイレントだと(実は)寝ちゃうこともあった。初見の頃、え?これがドキュメンタリーですって?おかしいだろ!と思った(わからないなりに嫌いではなかった)し同じ頃ソクーロフのエレジーシリーズとか観てソ連のドキュメンタリーは私が思っていたような記録映像作品ではなく多分に主観的なものなのねと理解したものだった(このあたり、上映後の井上さんの解説がちょっと触れてくださった点である)

が、柳下さんのピアノで今までになく新鮮にわくわくして観た、聴いた。99分45秒のロングバージョン、どの場面もこんなに素敵だったのか?と発見ばかり。いや、これ、十分カウフマンの「春」のきらめきがこの作品にしてすでに芽生えていたのではないか。なぜそれが今まで私には見えていなかったんだろう?コマ撮り、モンタージュ、斜めの構図、俯瞰と仰望、いろいろ試し尽して愉しんで撮っている、革命後の若々しいソ連の町。モスクワ中心かと思っていたら、オデッサやヤルタの労働者クラブでの撮影もあったんだな。

上映後の井上徹さんの解説、時間が押していて残念だったが、井上さんの言わんとする、ドキュメンタリー、劇映画、再現ドラマ、そしてヴェルトフの獲得した映画眼という映画の真髄、柳下さんが触れたこの映画の物語性についても、感じるところはあり、わかったつもりにはなっている。記録映像=ドキュメンタリーではないのだ。編集で主観が入りまくるが、それでこそ映画作品なのだ。

柳下さん「カメラを持った男」、「これがロシアだ」というタイトルで紹介されていたが、「これが映画だ」とも言える。

これは至言であると思った。

ピアノ、とってもパワフルで、超絶技巧も!とにかく楽しかった。



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