2015年10月18日日曜日

二度見の作品その②「ボーダレス」 オデッサ海岸通り: これから観る映画

何度でも観たい、これらの作品。
(「ナバット」も一般公開されてほしい。)





「草原の実験」
忘れえぬ映画、風景、音。







「ボーダレス ぼくの船の国境線」

昨年の東京国際映画祭で監督さんたちのアフタートーク。
この時は「ゼロ地帯の子供たち」というタイトルで、これはまたすごいイラン映画が出てきたものだと思ったものだ。一般公開なってとても嬉しい。沢山の人に観てほしい。

 
イランの少年はたくましくて優しいよね。何か背負って立つとなおさら。
主人公少年を演じたアリレザくんはエンジニア志望で映画界に興味はない模様。
 


 
 
映画「ボーダレス ぼくの船の国境線」は、イラン映画の王道を行くような堂々としたドキュドラマ風で、少年の生活音と不気味な外の戦争の気配が印象に残っていたが、見直すと意外と音楽が 挿入されていた。
 
しかし、最初の侵入者(イラク人の子ども)がほぼ最初にするのがロープを張って境界をつくることなのか、と、思うと複雑なものが胸をよぎる。
イラン人少年はロープを外そうとするが(そうしないと生活に支障が出る)、すぐには取れないほどの強度。
(サヘルさんはトークで、この境界が「自然と」なくなっていく、と述べていたが、私が見た限りでは二人は同じ空間で暮らしていく中で意識的に境界を撤回する方向に向かっている。)
 

 

 

サヘル・ローズさん(美しい)のトークイベントも残念ながら満席御礼とはいかなかった。サヘルさんの真摯な言葉は観客の心に響いたことと思う。確かに、少年の,イラク側侵入者への態度の変化の指摘は確か。さすがイラン少年、漢だよ、漢。
アリレザくん、自然と優しい眼差しになっている。
(登場人物中唯一固有名詞が与えられているのが「ハナン」だが、これには「優しい」という意味があるそうだ。)
DJの方の推量はそこまではちょっとどうかなと思った(勉強は俄かながらもしてきたようなのは好感が持てる)が、サヘルさんの感想はなるほどといちいち納得だった。



 サヘル・ローズさんはおきれいだった。日本語はすばらしかった。発言の内容も心に滲みた。彼女ご自身が戦争孤児だから。
映画の舞台となった国境の川は彼女の故郷ホラムシャハールなのでは?と。
(アスガリ監督のインタヴューによれば、映画の撮影場所はアルワンド川(シャットゥル・アラブ川)に実際に30年以上前のイラン・イラク戦争時より放置されている廃船だとのこと。)

そういったサヘルさんの話した内容はよかったのに、サンケイスポーツのこの見出しが世に広まっているのには溜息が出てくる。
サヘル・ローズ、イラン映画PR「異性と話すのは家族か親戚」
サンスポの記者の方が内容の薄い記事を書き(マスコミの方たちは上映後にどやどやと入ってきたので、もしかしたら作品を観ないで書いているのかも、と思わせるような、映画については他人事のような、通り一遍のことしか載っていません)、さらに整理部の人が頓珍漢な見出しをつけているという悲劇的展開だわ。
これ、すでに周知のことだと思うけれど、イラン・イスラーム共和国では、イスラームの教えに基づいて、女の子がヒジャブを身に着けるような年齢になると、男女別の生活になって、異性と対しなくなるから、監督がアリレザくんに共演者の情報を与えなかった意図について、サヘルさんなりの推測を述べているその一部の発言を切り取ったもので、映画のPRしましたという記事の見出しとしては読解力ゼロなもしくは酷いセンス。

オデッサ海岸通り: これから観る映画: ・クルド人監督バフマン・ゴバディの新作「サイの季節」7月11日からシネマート新宿ほか全国順次公開 ・『草原の実験』第27回東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞&WOWOW賞受賞作品 2015年9月、東京のシアター・イメージフォーラムほかで公開 http://cinema.ne.j...

3 件のコメント:

  1. MCを勤めたデッキーです。2015年10月19日 16:13

    こんにちわ!映画「ボーダレス ぼくの船の国境線」のトークショーでMCを勤めましたデッキーです。

    トークショーについて、このように紹介してくださり、ありがとうございます!
    サヘルさんのお話は、映画を観ただけではわからないイランの文化などを紹介してくださったので、本当に映画を併せてサヘルさんのお話で、より理解できた部分もあったように思いました。
    とても充実したお話だったと思うのですが、仰るようにマスコミのみなさんの見出しがそこって言うのは、ちょっと残念ですよね…

    映画のラストの解釈については、本当にご覧になった方によって、いろいろな意見があると思いますし(パンフレットに解説を書かれている方もまた違いましたね)、あえて穿った見方を紹介してみました。内容はともかく好感を持ってくださったようで、ホッとしました(苦笑)。

    この映画のように、観終わってからもいろいろと感想を言いたくなるような、そしてずっと心に残るような映画って良いですよね。ちなみに、僕も昨年の東京国際映画祭で拝見したアゼルバイジャン映画「ナバット」、凄く好きです。一般公開して欲しいですよねー。

    長文、失礼致しました。トークショーは初MCだったので、至らない点もあったかと思います。ありがとうございました!

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    1. デッキーさん、わざわざコメントをありがとうございます。
      トークイベント、とてもいい流れだったと思います。
      そんな風にお話を持っていってくださって、よかったです。
      (それだけにスポーツ新聞のああいう書き方は残念です。)
      イラン映画では、敵として戦った国の人のことも憎む対象としては描かれない、ということは、前々から感じています。
      なので、サヘルさんが「憎むのではなく赦す」とおっしゃっていたのが一番印象に残りました。

      もし「ナバット」が公開されるようなことがあったら、デッキーさんのトークショーで紹介・・・なんてことになるといいですね!

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    2. MCを勤めたデッキーです。2015年10月22日 10:35

      トークショーの流れ、そう言う風に仰ってくださると良かったです!
      そうですよねー、仰るように「憎むのではなく赦す」の方を見出しにしてくださった方が、映画の紹介には良いですよね(苦笑

      「ナバット」、そうなると僕も嬉しいです(笑)!ともかく一般公開はして欲しい映画ですよねー!

      御言葉、ありがとうございました!今後もトークショーでお目に掛かる事があるかもしれません。頑張ります!

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