2014年6月29日日曜日
ポグロムとジェノサイド
ようやくバーベリの『騎兵隊』を読み終えた。
読み始めたのが4月の終わり。
そもそもこの本を手に入れたのは、会議に行った先のとある会館にリサイクル本コーナーがあって(一律50円だった)、そこで偶然巡り合ったのだ。
何だか知らないけど、以前は埼玉の方の塾の所蔵だったらしい。(上の写真参照)
大型連休が始まる頃、初めの方の短編『血祭り』を読んでいた。
そんな中で、5月2日の晩、あれに出くわしてしまった。
あの日、チェルノモーレツの試合を観ようとして、映っていたのがオデッサ中心街での騒乱。普通の若者に見えた。主張を述べるわけでなく、ただ投石していた。もはやデモではなく、暴動。青黒のレプリカユニの若者も数人。彼らは試合開始の頃にはいなくなっていたけど。それから恐ろしいことが・・・。
後にロイターが「労働組合会館の火事は、中にいた親露派の失火が原因か」みたいなデタラメ記事を平気で配信するのであきれ果てたものだが、(右派セクターに煽られたにせよ)普通の若者たちが、ちょうどサッカーの試合で発煙筒をピッチに投げ込むような感覚で(←勿論それも許せないことだが。シュニンが負傷したケースがあることだし!)、火炎瓶をがんがん建物に投げ込んでいたのだし、消防車や救急車が向うのを妨害したりもしていた。
その様子は、元々試合を観るつもりだったネット配信の中継で、図らずも実際に観てしまった。
ショックだった。
眠れなかった。
『血祭り』という言葉が頭を巡った。
バーベリのもう一つの代表作『オデッサ物語』に描かれる、ポグロムの再現か??
それとも、「炎628」。
何が起こったのか、いまだに私にはよくわからない。
あんなに多くの人が亡くなったのに、あまりに報道は少ない。無視されていると言ってもいいくらい。
そして私が観たことと、全く違うことが報じられたりしている。
ただ、私自身が観たものも、あの事件のごく一部だ。
観始めた時には既に「チェルノモーレツとメタリストのファン合同のデモ」ではなくなっていて、主張を述べるのではなく、単に投石し続ける暴動になっていたので、ウクライナ統一を願ったデモがなぜ暴力的なものに変わってしまったのかそのきっかけもわからないし、試合が終わった頃、まだ騒乱は終息する気配はなく、逆にもっとずっと恐ろしいことが起こりそうだったが、私には最後まで観る勇気がなくてリアルタイムで配信していたその映像を消してしまったので、ほんとうの惨劇が繰り広げられたというその場を直接は観ていない。
「人民共和国」を名乗る人たち側の流す映像には、案の定「炎628」やジェノサイドに準えたものが多かったのだけれど、不思議に「ポグロム」という言葉は使われていなかった。
オデッサで起こった大量虐殺というと、私は真っ先にこの言葉を思い浮かべたのだけれど。
(そのあたりのことは、直後(5月3日~7日)にこのブログに書き留めておきました。)
分離・独立派の人たちは、キエフの政権側を、特に右派セクターのことをファシストと呼んでいて、その所業をジェノサイドと言う。
つまり、ファシストのナチスが行った人道に反する行い=ジェノサイドは、絶対的な悪であり、犯罪であると、大いに主張できるけれど、オデッサの住民がオデッサのユダヤ人を襲撃したポグロムについてはオデッサ、ウクライナの方々としてはなんか後ろめたくて使いづらいのだろうか。
何度も書いたことだが、2007年にオデッサの文学博物館を訪れた際に、バーベリらオデッサ派の人たちの資料があったであろう部屋は「リモント(改修中)」で観られなかった。
評価が定まらないゆえの、意図的な「リモント」であったのかどうかは、何とも言えない。
ウクライナリーグ2014-2015シーズンは7月26日開幕であるとのことだが、チェルノモーレツはあの事件についていまだ沈黙しているし、わだかまりが残り過ぎて、観る気になれない・・・かもしれない。
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