その8でよかった?
今、話題の『コリーニ事件』である。
簡単。
簡潔。
117ページ、大物弁護士で公訴参加代理人(平たく言うと被害者側の代理人)のマッティンガーが大規模な誕生パーティーの場面である。
客のなかにはライネンの知った顔もいた。数人の俳優、テレビの女性ニュースキャスター、サッカー選手、有名なヘアデザイナー、二日前に拘置所から仮釈放されたばかりの銀行頭取。
これだけ。
この本は史実にある程度基づいたフィクションであり、実在の政治家・司令官・法曹(検察官・法務官僚)が、多くは実名で出てくるが、マッティンガーの華やかな社交ぶりを示すために描かれる、現代の有名人については固有名詞を一切(実名・仮名とも)出していない。
(書き遅れたが、ライネンはこの小説の主人公、新米弁護士で、コリーニ事件の国選弁護人となる。)
シーラッハは、観たところ、サッカーを始めスポーツにはあまり関心を払っていない。
ドイツ、歴史、そしてサッカーについては、数年前に現代書館から刊行された好著(かなり読みにくいけれど)を参照していただくとして、チーム名とかちらっとでも出てくると、親しみやすさがぐっと増したと思うのだが。
ラストが予想通りシュリンク落ちなのも、もう一工夫が欲しかったことろ。
結局この作品は、171ページから181ページの10ページに、シーラッハが書きたかったこと(告発といってもよいだろう)が集約されていて、前後はそのためのものだ。
実際、この小説が出版されて数カ月後に、当該法律を含めた再検討委員会が作られたと、補遺及び訳者あとがきにある。
その意味でこの作品は«政策形成»文学である。
あと、やっぱりシーラッハ、ところどころ描写がグロいので要注意だ。
さて、そこで終わってしまうのも何なので、小説の中では単に「サッカー選手」としか記述されなかった、著名法曹誕生パーティー来訪者を想像してみる。
現役選手ではないが、ドイツサッカー界随一の大物、ベッケンバウアーはこういう場にはお似合いだ。かの現代書館本を読むとつくづくそう思える。
シュヴァインシュタイガーやメルテザッカー、ノイアーは…。
エジルやクローゼはいようはずがない(と信じたい)。
勿論、贔屓の選手がその場にいたってそのことで責めたりしないよ。ちょっとショックだろうけど。
«首相の息子»や今度移籍するらしいコッカーは?
想像すると気が重くなるのでやっぱりやめておく。
それと、ネタバレしないようにはしたつもりで、わかりにくくなっている点はご容赦を。
読んでね。
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