2013年7月15日月曜日

ポチョムキン・ダービー、『戦艦ポチョムキンの生涯』を読みながら

先週水曜日のウクライナ・スーパーカップでシャフチョール相手に零封はされなかったチェルノモーレツは、早くも昨日次の試合がありました。シャフチョールもだけど、忙しい日程だ。

ウクライナプレミアリーグ第1節、対戦相手は一部リーグ優勝で昇格してきたFKセヴァストーポリ。
ともに港湾都市、ロシア語優勢地域、数々の戦争で激戦地となった歴史を持つという共通点のある都市ではありますが、オデッサがロシア帝国の南の窓として誕生し、コスモポリタンで«社交的»な港町なのに対して、セヴァストーポリは軍事都市として長く外国人には閉ざされた都市でした。

もう一つ、これはあるサッカーマニアが指摘していたことですが、「セヴァストーポリと言えば戦艦ポチョムキン」。
そうなんだ。
私の方はセヴァストーポリと言えばレフ・トルストイだったし、戦艦ポチョムキンと言えばセヴァストーポリと言うより何と言ってもオデッサだった。

これは誰も否定しないことだろう、戦艦ポチョムキンというと、まずは映画「戦艦ポチョムキン」であり、映画「戦艦ポチョムキン」というと、あのオデッサの階段のシーンだということを。

 
2007年夏撮影 階段の下から海まではかなりある。
 
オデッサは戦艦ポチョムキンの水兵が叛乱を起こした地で、かの戦艦の生涯のうちでも最もスポットライトがあてられた時期にあたるのだろうが、戦艦が建造され進水式を迎えたのはオデッサよりもう少し東にあるニコラエフという港だ。
ニコラエフから初航海でクリミアのセヴァストーポリに向かうと、そこが母港となり、ニコラエフには二度と戻ることはなかった…。
 
と、私は今、『戦艦ポチョムキンの生涯 1900-1925』を読んで、かの戦艦の軌跡を追っている。
 
それはともかく、戦艦ポチョムキンゆかりの地同士の久しぶりの対戦は、1-1の引き分けに終わったようだ。
うーむ、スーパーカップで優勝チーム相手に負けるのは想定内だが、昇格してきたばかりのところには確実に勝って気持ちよくこのシーズンのスタートを決めたかったなあ。
次の試合は木曜日、18日のEL予選で相手はダチヤ・キシニョフ(モルドヴァ)。
 
『戦艦ポチョムキンの生涯 1900-1925』、オデッサ・コスモスでは、映画のストーリー、有名シーンを史実と比較しながら語る稀有な物語。映画ファン、戦艦・軍事史オタク、ロシア革命史に興味のある人必見!”という出版社の宣伝文句をそのまま引用したが、ある書店では軍事史コーナーに置いてあるそうだ。
ということからも、軍事史の面がやや強いかもしれない。私なんぞ戦艦とか駆逐艦とかいう区別がついていないのだが、そのあたりが詳しい(ようである)。冒頭に『世界の艦船 ロシア/ソビエト戦艦史』から引用された図と数値の資料が載っているので、それを参照にしながら(それでもよくわからないが)読んでいく。
 
第1章 誕生
 
は、映画で描かれる水兵の叛乱の前史部分で、古の東ローマ帝国あたりから始まってエカチェリーナ2世、ポチョムキンによるクリミア半島のロシア帝国への併合、ロシア海軍史(軍艦史)が駆け足で綴られる。
 
第2章 叛乱
第3章 接近
 
は、映画「戦艦ポチョムキン」の構成に沿って
1.「人びととうじ虫」
2.「後甲板のドラマ」
3.「死者の呼びかけ」
4.「オデッサの階段」
5.「艦隊との出会い」
という章建てにして、映画のストーリーと著者が検証した史実を比較しながら物語る。映画を観ているととても読みやすい。
 
さらに
 
第6章 それから
第7章 更にそれから
 
は、映画で描かれたあの叛乱後、ロシア帝国末期からロシア革命、ソ連邦初期の時代に、名前を変えて«その後»を過ごした戦艦ポチョムキンと関わった人たちの後半生を描く。
戦艦の«死後»、エイゼンシュテインが例の映画を撮影する場面で終わる。
 
といった具合に、私の場合、軍事面には疎くても映画のシーンを思い出しながら、それと史実の違いを確かめながら読んでいくという作業を楽しめる。おもしろい歴史の本になっていると思う。特に専門知識が要求されることなく、読みやすいので。出版社の宣伝文句は決して過大なものではない。
 
最後に気になったこと。
映画「戦艦ポチョムキン」について日本でのオーソリティーと言えば、昨年亡くなった映画評論家の山田和夫さんのお名前をまず挙げなければいけない。
これは彼の立場に賛同しようとそうでなかろうと、彼の研究を無視して映画「戦艦ポチョムキン」を語ることはあり得ないだろう。
上述したとおり、この本では第2章・第3章はまるまる映画「戦艦ポチョムキン」の構成に依っている。
その際に、69ページには
「尚、その日本語訳、並びに映画中の字幕文については、全て山田和也『戦艦ポチョムキン』からの引用である。」
と書かれ、さらに巻末の参考文献のリストでも
山田和也『戦艦ポチョムキン』国民文庫、1987年
とある。
もしかしたら、山田和也という研究者が別に存在するのか?と思ったが(実際そういう名前の俳優は実在するようだ)、国民文庫から『戦艦ポチョムキン』を出されているのはやはり山田和夫さんのようで、単純に誤植なのだろうか?2か所とも?
細かいと言えば細かい点だが、人間関係上はちょっと重要だったりするので、この点が未確認なうちにおいそれと人に紹介できないでいる。
 
ほんとうは著者のサイン会とか講演会とかでお話を伺い質問もしたいところだけれど、そういうスケジュールは全くないようだ。残念。
 
チェルノモーレツ、プレミアリーグ戦の次の対戦相手はヴォルスクラ・ポルタヴァ。
(相性悪いです。)
 
このときも負けたのだった。
 
 
セヴァストーポリの次の対戦相手はシャフチョール・ドネツク。
 
Вперёд!!!

0 件のコメント:

コメントを投稿