2025年12月10日水曜日

読書メモ 『こぐまのララはうたう』

 

『茶色の朝』、いやむしろ『かさをささないシランさん』系統の絵本で、解説を読まないと台湾の白色テロによる人権弾圧をテーマにしたとはわからないだろう、権力者の理不尽な人権侵害が一般化普遍化した形でメルヘンになっている。そして悲しみを湛えたエンディングに今年の死刑映画週間で観た台湾映画『流麻溝十五号』を思い出した。 絵はまあまあ可愛い。しかし・・・やはり子ども向けではないだろう。台湾の状況を子どもにわかりやすく解説できる日本人がどれだけいるだろうか。
モデルは蔡焜霖さんとのこと。毎日新聞夕刊2025年10月22日の紹介記事で知って図書館にリクエストした。

2025年12月8日月曜日

オデッサ海岸通り: 今年のクリスマスに贈る本(2025年補充)


12/6の子どもを守る文化会議のメイン発言者暉峻淑子先生は、96歳とのことだが、大変お元気で「立ってやります」とおっしゃって、ほんとに90分間立ったまま発言を続けていらした。
戦争体験、家庭での子育ての体験を交え、競争ではなく対話で、平和と民主主義と人権を培っていこうとお話しされる姿はとても説得力があった。
先生のご本はたいてい読んでいるのだが、なぜかこの本はまだだったので、会場で購入して、先生のサインをいただいた。
中頃の、サンタクロースこと聖ニコラウスの出身地を訪ねる弾丸ツァーの件から読んでいる。
地中海沿岸の町ミラ(伝道していた場所)と出生地パタラは現在イスラム圏で派手な観光地化はされておらず、辛うじて跡が残っている状態であるとのこと。
対し、フィンランドのサンタ村については、「すっかりアメリカ化された観光地」と厳しい。
今後、大切に読んでいこう。

今年は、1~4月の立川プレイミュージアムでの堀内誠一展で、『くろうまブランキー』の原画に再会できた。
原画展は何度があったけれど、今回は初めての全点展示・テキスト全文展示だったので、絵本の世界にどっぷり浸れることができた。

11月に祖父母の反戦平和活動のことをお話する機会を得たが、そこにフレネ研究会の方が参加されていて、『ブランキー』がフレネ学校の生徒さんの作ったお話だと初めて知ったとおっしゃっていて、祖父の導きだったのかなと思ったり。

ブランキーのポストカードは、今なら銀座のナルニア国(教文館)で入手できるはず。



オデッサ海岸通り: オデッサ海岸通り: 今年のクリスマスに贈る本(2024年補充): 聖なる夜に 著者 : ピーター・コリントン ビーエル出版 発売日 : 2000-11-01 ブクログでレビューを見る» 「こころの友」に掲載されていたクリスマス本。 トレーラーハウス住まいの老女がアコーディオン演奏で日銭を稼ごうとするもとうとう質に入れてやっとの思いで得た小銭をひ...


堀内誠一さんの絵本デビュー作。パウル・クレー風の絵がとっても素敵。
ストーリーも泣かせます。フランスの小学校の児童達の共同制作なのです。

祖父から贈られた本で、これまでに何度も何度も読みました。
おじいさま、ありがとう!

2025年12月5日金曜日

読書メモ:刻印 満蒙開拓団、黒川村の女性たち

 

遺族会の現会長ご夫妻、先日の高校生平和のつどい証言の分科会の前後にお顔を合わせた。人当たりの良い感じのよい方たちで、つどいの前後にも講演予定があるとのことであまりお話する時間はなかったが、引き継いで語っていかなければならないことを的確に掴んでお話しされる方だった。 前会長、やはり現会長とは同姓ながら親戚関係はないとのことで、ずっと公表には強硬に反対してきて、この本を読んで、一人「悪役」を背負ってしまった形に、もはや可哀そうにさえ思えてしまうが、事実を隠そうとしてきたのは絶対彼ばかりではないのだよなあ。
かつ、前会長の行為は一応は「接待させられた女性達を誹謗中傷から守るにはこうしないといけない」と信じていたからというのがあるわけで、彼女たちの尊厳を踏み躙った最大の加害者たちは、まずは「接待させよう」と発想した人たちだし、後に彼女たちの行為をあろうことか誹謗中傷した人たちではある。でも、ご本人たちが顔を出し本名を名乗って証言しているのに、なお隠蔽しようとしたのは、彼女たちのことを考えてというよりも、やはり自らの罪を認めようとしない、卑怯な態度だろう。日本の縮図だ。
非常に立派な態度の遺族会現会長だが、長年自民党員で、町議会議員で、議長も務める。ここまでは保守派の人に時に見かけるタイプとして違和感はない。著者はさらに2024年の自民党総裁選で彼が石破氏ではなく高市氏に投票したと聞いて「え?高市さん?」となったと記述しているあたりはなかなか興味深い。高市氏が侵略を認めない発言も「直接は聞いたことがない」から、ご自分は日本人の加害行為を認めるのに全く抵抗はないが、歴史歪曲主義者のことをよく知らないままに支持してしまう、ということか、と。

2025年11月30日日曜日

読書メモ:ジートコヴァーの最後の女神たち

なんという読後感!最初から最後まで「女神」への現世の仕打ちが恐ろしい。(が、それ自体はまあありふれている。)
変節する体制順応者の姿(他責思考、被害者意識を拗ねらせる)に既視感。具体的に言うと、シェピチコの『処刑の丘』の裏切者だな。
しかし、一番興味深かったのはチェコはモラヴィア、そしてスロヴァキアの人名愛称(それも苗字の)。村人同士はギヴンネームではなく苗字で呼ぶのか。

2025年11月19日水曜日

深夜2時過ぎまでかけて読了。『デモクラシーのいろは』

 


ストーリーは(無理な展開がないわけではないが)おもしろい。敗戦直後の日本で、民主主義が根付くのがいかに困難か、同調圧力になびきがちな様子はほんとうにそこまで?!と勘繰りながら読み進めると、強かな反撃があったり。そして根深い女性蔑視が一見リベラルな男性にも潜むことが暴かれ、現代に直結して苦笑してしまう。
なんだか井上ひさしの戯曲みたいで、舞台を観ているような感覚になる。そう、舞台化(映画ではなく)されたら是非観たい。

2025年11月16日日曜日

あの絵にあの曲『名曲が語る名画』

 

名曲に結び付いた絵でまず想起するのは「展覧会の絵」でムソルグスキーに追悼されたヴィクトル・ハルトマンの絵画で、この本にも勿論掲載されている。絵を知っていて曲を知らないものもあれば逆もある。意外性のある組み合わせだったのが「禿山の一夜」に項で紹介されたのが洗礼者ヨハネを描く、ロシアとは全く別世界の西洋絵画的なボッティチェリらの作品。まあ、しかしこういう企画だと、聞きながら読めるような(自分でいちいち検索するのではなくて)附属の音源が欲しくなる。無精なので。それと、「画家マティス」はあの人だと思っていた。

7 モーツァルト:オペラ『魔笛』&マルク・シャガール『魔笛』
13 ショパン『革命のエチュード』&マルチン・ザレスキ『ワルシャワ武器庫の略奪』、ユリウシュ・コサック『オストロウェンカの戦い』、オラーヌ・ヴェルネ『ポーランドのプロメテウス』
27 スメタナ『我が祖国』&ムハ『故郷のスラヴ人~トゥラン人の鞭とゴート族の剣の間で』『グリュンワルトの戦闘の後~北スラヴ人の団結』
39 シェーンベルク『3つのピアノ小品』&ワシリー・カンディンスキー『印象Ⅲ(コンサート)』
40 ラフマニノフ『死の島』&アルノルト・ベックリン『死の島Ⅰ』『死の島Ⅱ』
41 スクリャービン『プロメテー火の詩』&ルーベンス『縛られたプロメテウス』、ジョルダーノ『縛られたプロメテウス』、フューガー『火を盗んだプロメテウス』、ブロッホ『ヘラクレスによって解放されるプロメテウス』
42 ストラヴィンスキー『火の鳥』&マルク・シャガール『火の鳥』舞台装置
48 プロコフィエフ『ロメオとジュリエット』&ブラウン『ロミオとジュリエット』、ライト『ロミオとジュリエット』、クリムト『ロミオとジュリエットの死』
49 マルク・シャガール『14の楽曲』&チャイコフスキー『白鳥の湖』、ストラヴィンスキー『火の鳥』

そういえば、「世界の美術館めぐり日本編」は東京の美術館ばかりだな。


2025年11月10日月曜日

不屈の本棚11月:わたしがナチスに首をはねられるまで

 

レジスタンスを綴った著作としてはかなり異色。自伝的フィクションというのはよくある手法ながら、ドキュメンタリー映像を作成しながら客体と自分を語るという手法。
ナチス将校を刺して斬首されたラトヴィア出身のロシア系ベルギー女性マリーナは、墓碑に「斬首された」ことと「マルターエフの妻」であることしか書かれなかった。一緒に埋葬された男たちが「政治犯」とか「ベルギー解放軍」とか書かれているのに。そしてこの夫が(レジスタンスはしてはいたらしいが)家族に対しては卑劣であった。”戦争孤児”となった遺児は深いトラウマを抱え、母はしてもいない罪を被ったのだと言う。
女性の実績を無視し消し去ることは学問や芸術でしばしば行われ、昨今はそういった歴史の掘り起こしが行われているが、レジスタンスにおいても”それ”はあった。
マリーナは亡命ロシア人でありながらスターリニスト、敬虔なカトリック信者でありながらテロに走るという、一筋縄ではいかない組織に属さない野良レジスタンス。彼女と家族、周囲との軋轢が痛々しく、まさに今に通じるものがある。
彼女が同志を得られなかったのが残念だ。治安維持法の弾圧に抵抗した祖母は、その時代の仲間達とは生涯にわたって親交を保っていたのを見ていたので、そう思えてしかたない。

 

2025年7月13日日曜日

治安維持法正当化発言に抗議する

 Крайне правая политическая партия «Партия политического участия»?

Сегодня в ходе уличной речи в Кагосиме лидер крайне правой политической партии «Партия политического участия» Камия выступил с заявлениями в оправдание Закона о сохранении мира.
Это заявление крайне безответственно и игнорирует исторические уроки серьезных нарушений прав человека и подавления свободы, к которым привел Закон о сохранении мира.
Чтобы избежать повторения ошибок прошлого, которые привели к темной политике и войнам, нельзя игнорировать эти замечания.
Мы решительно протестуем в защиту свободы и демократии.

2025年6月25日水曜日

1年

 Сегодня исполняется год с тех пор, как умерла моя мама.

Сегодня первая годовщина ее смерти.

Я положу цветы на ее могилу.

Мне все еще очень грустно.




2025年6月17日火曜日

録画メモ:私のちいさなお葬式

 1.私のちいさなお葬式/Карп отмороженный

2.ファイアー・ブレイク~炎の大救出←すでに録画してあったらしい。記憶にないが。

3.名探偵のお弁当~ドストエフスキー『罪と罰』


2025年6月16日月曜日

録画メモ: ぼくとパパ、約束の週末~推しの旅はこれから



贔屓のクラブを決めるためにドイツ中を巡る実話ベースの映画と聞いていたので、地方のすごくマイナークラブも出てきて耳寄りエピソードが取り上げられるのかなと期待していたのだが、殆どメジャーなクラブが登場するばかりだったので、その点は肩透かし。
ブンデスリーガについてはあんまり知らないので、パンフレットで確かめたいことがいろいろあったが、映画館(新宿ピカデリー)では入手できなかった。残念。
サッカー映画、サッカーファン映画というよりは、自閉症を抱えたジェイソン君と家族(特に父親)の成長のお話。

人それぞれだからいいんだけど、贔屓のクラブって、あれこれ条件をつけてそれをクリアしたところに決めるとか、そういうもんじゃなくて、試合を観た瞬間に恋に落ちたり、育った土地で空気のように存在してそれとともに生きていく、とか、私にとってはそういうイメージだったので、「贔屓のクラブを決めるためにドイツ中を巡る」というジェイソンの発想自体、私とは別物なのだが、旅は旅として楽しめばいいと思う。ただ、そうしていては一生贔屓のクラブは決まらないだろう。(これもお節介な私見だが、元々ドルトムントにすればいいんじゃないの?という気がしている。ジェイソン母実家~アルバニア系~の応援が可愛い。)

早々に、WOWOWで放映してくれた。




オデッサ・スタジオ: ぼくとパパ、約束の週末~推しの旅はこれから:   自閉症の少年ジェイソンが推しのサッカークラブを見つけるために父と週末ドイツ国内スタジアム巡りの旅をする。 10歳のジェイソンが贔屓クラブを決めるにあたってのルールが「サステナブル」とか「ナチス排除」とかグレタさんっぽい地球環境問題活動家的な視点があるのはちょっと滑稽な感じもす...

録画メモ:チャイコフスキーの妻


WOWOWで放映していたものを録画。
映画は去年観たのでパンフレットあり。

セレブレンニコフの映画はどれも妄想が広がっていく系統だが、これや「インフル」とかより、やっぱりあれが観たいよ。放映して欲しい・・・。”Лето”

で、これは同性愛者チャイコフスキーのカムフラージュ婚?の相手、アントニーナを取りあげたドラマだが、必ずしも史実のとおりではない(セレブレンニコフなので妄想入り)。
しかし、チャイ様の妻だ、絶対別れないと主張していたアントニーナも、弁護士との間に3人子どもをもうけていたとは(育てていないが)、パンフレットを読んで知った。結局何だったんだ??

前衛的なダンスシーンが意外とおもしろい。

 

2025年6月7日土曜日

母のある一日

 母の手書きメモ

11/11

(2024年11/11(月)は倒れて要介護認定受けてだから違うし、2023年かと思ったが、2023年は土曜日なので、2022年の11/11(金)だろうか?・・・と思ったらどうやら2020年11月11日(水)のようだ。)

ネコ→エサ

しんぶん取り

朝食手伝い

食事

食器洗い

ゴミすて

流し回り洗い

洗タク、あらい、干し

農協へ買物、植木水やり、Beと遊ぶ(←ヴィーカのことなのでほんとうはViまたはВиであるが)

昼食

新婦へ新聞取り→**事務所―帰宅

(サーヴァ行くも帰りも遊ぶ)

サーヴァちゃん、母他界後会えていない
サーヴァも一緒に行ってしまったのだろうか

昼寝、2回
フロつけ
夕食作り
新聞9月分10月分整理(結構大変)
宅配受けとり

(裏面)
2020
1925
 95


心筋こうそく



2025年3月10日月曜日

A先生の思い出に

 2011年12月刊行で、たぶんいただいたのが2012年1月だったのだろう。法治主義から遠く離れたこの国のことは、悪い意味で大変感慨深いものがある。


いただいた方が最近亡くなられ、ふと手に取り頁を繰る。2012年刊行だが、その後も何とまあ日本は法の支配から外れた酷い国になったことだろう・・・。

2025年2月11日火曜日

不屈の本棚:わたしの人生 ダーチャ・マライーニ

 



戦時中の二年間、ファシスト政権への忠誠を拒否した両親とともに、名古屋の外国人収容所で不自由と飢餓の苛酷な体験をした著者の自伝。自らの体験とともに、父母や妹による回想・記録を交え(このバランスがよい)、治安法制下で戦時の日本で、「ふつうの人たちの親切、寛大さ」とともに「警察官のサディズムと狂気の国家主義、人種的偏見による軽蔑に苦しめられた」記憶を率直に語る。一家は宮澤・レーン事件の宮澤氏とも懇意だっただけに、治安維持法についても鋭く言及。また、”開放軍”たる米兵に性暴力を振るわれそうになったことも記している。
かなり前に観た映画「思い出のアン」を思い出させるが、「アン」が日本人の少年の視点で描かれているのに対し、こちらは収容されたマイノリティーの少女の視点なので、戦時下・治安維持法下の日本の醜悪さがより生々しい。