月火水木と4日連続で、築地市場の浜離宮朝日ホールに通っていた。
ロシア音楽映画祭とカレン・シャフナザーロフ監督作品映画祭Ⅲだ。
4日間仕事を定時に終わらせて会場に駆け付けるが、1本目の作品は45分くらいは見逃してしまう。
なぜだかいつもの客層とは違って(今回いずれも開始が17:00からという、勤め人を無視したものだったから観客は必然的に年配者が主だった。まあ、年配者中心だというのはロシア映画の企画ではいつものことだけど)とっても騒がしかった。
上映中でも大声で話し、大きな音をさせてパンやおにぎりを食べ、まだエンディングのクレジットがスクリーンに映し出されている段階で席を立って出てゆく。一言で言って呆れた一団がいた。
映画を見慣れている人にも、特にロシア方面に関心があるようにも思えず、そういう人たちが連日見に来ているのは不思議だった。
まあ、とにかく最終日の木曜は彼らがいなかったので、比較的快適に観ることができた。
もうほんとに!頭にきた!なんなの、あのひとたち?!
すでに初日にツイートしたことだが、ロシア文化フェスティバルの今年の映画上映についても非常に不満がある。
平日の昼間の上映ばかり。
この時間帯に観に来られるのは言わずもがなフリーの人に限られる。年金生活者とか自由業者とか(この時期であれば休暇中の学生もありうるが)。
9時5時で働いているような勤労者は観客としては切り捨てられたということだ。
これも非常に頭にきている。
5月にあった「現代の英雄」もそうだし、12月にあるモスフィルム創立90周年記念映画祭もそうだ。
作品の選定としても、例年最近のものが極端に少ないこと、モスフィルム社長のシャフナザーロフ作品ばかりであることにどうかという思いを抱いている。
確かにシャフナザーロフはおもしろいのだが、他の監督作品も紹介してほしいし、是非そうするべきだろう。
初めて観るのは二日目の「作曲家・ハチャトゥリアン」(マリアンナ・タブロフ監督1964年)、シャフナザーロフの「皇帝暗殺者」「満月の日」「善人たち」。
昨日の2つはよかった。いろいろ不満を述べてきたが、この2つはさすがシャフナザーロフ、さすがロシアだ。
特に「善人たち」。
原作はレオニード・ゾリン。
無学で無教養な輩が由緒ある研究所で出世し君臨してしまう様子が、コミカル、というよりグロテスク。
主役のブルコフは一見井上順。周囲の学者たちは泣きつかれて学位論文をパスさせてしまうがこれが運のつき。無学だから無能というわけではないのだ。手元に置いてコントロールしておこうとした学者たちは、「彼は頭悪い人だから」と馬鹿にしていると、逆に相手の術中にはまってしまう。
翻弄され、駆逐されてしまいそうになる。
しかしいよいよ彼の命運も尽きたかのように思えたが…。
私自身は頭の良い人センスのいい人が大好きで逆にこの人頭悪いなと思うとなかなかその人のことを好きになれなくなる傾向があるので、こういう人を目の当たりにするといらいらして腹が立ってしかたなくなる。
しかもなぜだかこの手の人は異性受けが良い。不思議にもてる。
『ワーニャ伯父さん』のセレブリャコフ教授を想わせる。
たちが悪いぞ!
かなりぞっとしつつ鑑賞した。
しかし、この映画は1979年制作、つまりソ連時代の、ペレストロイカ以前の「停滞の時代」の作品だ。
「これ、上映できたの?」と帰途に友人と話した。
「制作しても上映はできなかったかもね」と友人。
後に確認したい。
こんな連中がソ連の知識層を管理支配していたなんて、ソ連当局が喜ぶような作品では全くない。
ほのめかしではなく、相当直接的な当てつけであり、皮肉に満ちた映画で、無論当時のソ連社会限定の批判ではなく、ゴーゴリの市長の台詞が響くような、時を超え所を超えた風刺がぐさっとくる快作だ。
シャフナザーロフ、マラジェツ。
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