2015年8月2日日曜日

親ソ仏蘭西からこてこて露西亜へ

先週は日曜の「サン・ソレイユ」から始まって土曜まで丸一週間、クリス・マルケル漬けの日々だった。

メドヴェトキンのことはマルケルの「アレクサンドルの墓 最後のボルシェビキ」のおかげで知った。マルケルについてもこの作品しか知らなかったし、メドヴェトキンもこれで知った「幸福」しか観ていない(という認識だった)。
メドヴェトキンの他の品も観たいと切望するが、マルケルについては今回の特集でメドヴェトキン再発見だけの人じゃないと今更知った。いや、それどころじゃなくいろいろマルチな人だったということだ。
私は今までマルケルのことを酔狂で思想的にもとんがった芸術家なのだろうと思っていたので、なんていうか、不思議にファンが多いみたいなことに驚き、未だにアテネ・フランセでの雰囲気が謎で仕方ない。
皆に好かれているフランスのオールドコミュニスト?
ゴタールらのジガ・ヴェルトフ集団に対し、マルケルのメドヴェトキン集団。
何がわからないって、きっとフランスのコミュニストについてなのだろうな。
(映画「オーケストラ」のノリもちょっとわからなかったところがあった。フランス共産党の人のソ連またはロシアに対しての心象ってどうよ?みたいに。今度、友人に聞いてみよう。)

メドヴェトキン自身のドキュメンタリー映画はまだ観ていない(と思う)から何とも言えない面はあるが、マルケルの作品を観る限り、ドキュメンタリーといってもいわゆるドキュメンタリーじゃない、プロパガンダというべきなのか、主張が、主観が、前面にきている芸風なので、「えー、あなた、ほんとにそうですか?」とか突っ込みたくなる場面がしばしば出てきてしまうドキュメンタリーなのだよね。(ジガ・ヴェルトフもそうだけど、マルケルのはより理屈っぽく哲学の風味が効いている。メドヴェトキンは、いやメドヴェトキンの「幸福」の話ですけれどね、あれはあれでぶっとんでいるけど、ドキュメンタリーではなくて劇映画で、寓話的で素敵です、大好き。)

SFの「ラ・ジュテ」(「死者からの手紙」「ミュージアム・ビジター」のロプシャンスキーを思い出した)は置いといて、思い出の「アレクサンドルの墓」、月曜日の「不思議なクミコ」、火曜日の「美しき五月」と観続けることによって彼の作品に慣れてきたせいか、木曜日の「A.K.ドキュメント黒澤明」と「アンドレイ・アルセニェヴィチの一日」あたりになると、意外と普通のドキュメンタリーに思えてきた。で、実は「アンドレイ・アルセニェヴィチ」は観たことあるのを思い出した。たぶんアテネ・フランセでだろう。トークでの言及があったように、タルコフスキーは結構明るくて悲壮な感じはない。病気が発覚していないせいもあるのだろう。しかし、元々映画製作の現場では生き生きはつらつしていたのかもしれない。
金曜日、「アレクサンドルの墓」再見。確かに二度目でわかったことがいろいろある、ような気がする。(ソ連映画の知識も蓄積されてきたので。)いつかまた観たいと思う。「幸福」その他メドヴェトキン作品を観たい。メドヴェトキンはドキュメンタリー作家というより、プトゥシコに先んじるような特撮映画の人だったのかもしれないな。と、教会爆破の逆回転シーンを観て思う。
土曜日の「笑う猫事件」でまたわけわからなくなるのだが。でも、「笑う猫」は実在した(実際に行動された)芸術及び政治行動で、記憶に引っかかっていた種々の出来事(ルペンがジョスパンを破って大統領選決選投票に行ってしまったこと、それに圧倒的多くのフランス国民が反発したことなどなど。ディフェンディングチャンピオンだったフランス代表がワールドカップで惨敗したことなんかも)大変に懐かしい。

あと、8月7日と9月21日に企画がある。
8/7はウィークデイの日中から夕方で、神田外語大学での「スラヴ文学は国境を越えて―ロシア・ウクライナ・ヨーロッパと日本」と掛け持ちはきつい、いや無理だろう。メドヴェトキンの「幸福」とジガ・ヴェルトフの「カメラを持った男」の上映があって、フランスからのゲストも魅力的なのに・・・。
9/21の方は連休ただなかで、チラシには場所が書いてないようだけど、どうやらアップリンクらしい。
「クリス・マルケルはなぜ猫好きか」って、理由なんてあるのだろうか?

というわけで、マルケルにまだ感覚が麻痺しているような状態だが、今日はオーケトラ・ダヴァーイを聴きに行った。
演奏前後のアナウンスは日本語とロシア語の2か国語放送。
チケットもロシア語表記がありがたい!(欲を言うならフォントをもっとオシャレにしてほしい。)
演目も有名なバレエ組曲を二つ、ストラヴィンスキー「ペトルーシカ」とプロコフィエフ「ロメオとジュリエット」全曲版より。
アマチュアであるので、管楽器なんぞは今一つという場面も多かったけれど(「ペトルーシカ」のお祭り場面なんか、もっと気分が高揚して盛り上がるものだと思っていたのに、あら?という感じで通り抜けて行ってしまった)、有名な割には通して聴く機会は意外と少ない曲を聴けて、貴重な経験だった。

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