私はそのころ『イリアッド』の英雄たちを非常によく知っていた。今の子どもたちが、サッカーやホッケーやボクシングの英雄たちをこまごまと知っているよりも、もっとくわしく知っていただろう。
マルシャークの少年時代は、まだサッカーやホッケーの選手が英雄ではなかったようで、加えて彼が育ったヴォロネジではそういったスポーツ文化が学校の生徒たちには行き及んでいなかったと見える。
彼自身も腕白なエピソードよりも読書好き、詩人志向の少年であったようだ。
マルシャークの自伝。チュコフスキーが『銀いろの記章』で述べているような理不尽な退学ほどではないにせよ、ユダヤ人枠を外れて入試に落ちるという憂き目に遭っている。スターソフと知り合い彼を通じて当時のロシア最高の文化人と知り合うようになってからの部分は夢のよう。歴史物の作家となった弟よりもお兄さんとの結びつきが強い幼少年時代だったようである。お兄さんの初恋が切ない。(自分のがどうだったのかは明かしていない。)
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