2011年8月1日月曜日

「ベルリン陥落」の衝撃

ミハイル・チアウレリの「ベルリン陥落」が、“ソ連初のカラー映画”と書いてあるのを見てびっくり、というのは、昨日が初めてではありませんでした。

昨年のオーケストラ・ダスビダーニャの演奏会のプログラムノートに書いてあったのです。
「へんなのー、ソ連初のカラー映画はエックの「うぐいす」なのに。1,2年違うならともかく、「ベルリン陥落」は戦後の作品でしょ?何と間違えているのだろう???」
と、そのときたいそう訝しく思ったものでした。
演奏会の感想はこちらです。→「ショスタコーヴィチ、疾走」

昨日、「100年のロシアPartⅡ」のプログラムに「ベルリン陥落」が入っていたので、「オデッサ・コスモス」で紹介しようと、原題は何だったか確認しようと、ネットで検索してみたら、最初にウィキペディアが挙がっていたので(普段私は「ウィキペディアなどあてにならない」と端から信用していないので、特に日本語のウィキペディアは見ないし、仮に見ることがあっても他で裏を取らない限り、“証明済み”とはしないのだが)、ちらっと覗いてみたのです。
そこで

その他 [編集]
  • ソ連初のカラー映画であった。ソ連占領地区にあったアグファ社の工場で製造されたフィルムを使用して撮影した。カメラテストの結果、安定した色彩を再現できるのは曇天時のみであることが判明し、曇り空の時を伺い撮影を行った。
との件があるのを目にしたのでした。
オーケストラ・ダスビダーニャのプログラムノートを書いた方はここを参照されたのでしょうか。

では、この件を書かれた方は、何を参照してこのように書かれたのでしょうか。
ここからは私の想像です。
やはり日本語のウィキペディアで「カラー映画」を見ると、

また東側諸国でも第二次世界大戦後、ナチス・ドイツから奪ったアグファカラーフィルムを使い、1949年のソ連映画『ベルリン陥落』などのカラー映画が登場した(余談であるが、小津安二郎はアグファ・カラーの色彩を好んでおり、『彼岸花』以降のカラー作品にアグファ・カラーを用いている)。

という一文があります。
ここには、「ドイツのアグファカラーの方式でソ連が1949年に「ベルリン陥落」を撮った」旨記載されています。
一見、東側諸国がカラー映画を作ったのは戦後(ドイツからアグファを接収して以降)であるかのようにも読める文ですが、「ベルリン陥落」が「ソ連初のカラー映画である」とは書かれていません。

カラー映画を撮る方式はアグファの方式に限ったことではなく、ソ連はアグファを接収する以前に独自の方法で、「うぐいす」(1939年)や「イワン雷帝・第Ⅱ部」をカラーで撮っていました。

「ベルリン陥落」のウィキペディアを執筆された方は、もしかしたら上記の一文を、「ベルリン陥落」がソ連初のカラー映画であるかのように誤読してしまったのでしょうか。

そこには、「当時のソ連の技術ではカラー映画など作れまい」というような思い込み、偏見が入りこんでしまったのかもしれません。

殆どの人にとっては、ソ連初のカラー映画を撮ったのがニコライ・エックであろうがミハイル・チアウレリであろうがどうでもいいことでしょうから、敢えて「大間違いだ、書き直せ!」と主張しようとは思いませんが、できるだけ正しく文章を読みこむことができるように、心掛けたいものです。

ニコライ・エックは、ソ連初のカラー映画を撮り、またソ連初のトーキー映画「人生案内」を撮った人でもありました。


補遺(2011年8月6日)
キエフさんのコメント後の補足

ウィキペディアの「ベルリン陥落」について、「そんなに気になった」のは、なぜこんな、一見ありえなそうな間違い(ソ連で実際にカラー映画が制作・上映されてから10年以上たった頃の作品をそうだと思ってしまった)が起こるのか、を考えてみた、ということです。
少なくとも自分はそういうことをしたくないので。
この場合は、私の推測では、「ベルリン陥落」執筆者が日本語ウィキペディアの「カラー映画」中の記載を勘違いしてしまったのが原因であろうと。

自戒
*文章を正しく読むこと
*書かれていることが正しいのか検証すること
*書かれていないことを推測する場合、とりわけ慎重になること
(推測・解釈を事実と混同しないこと。事実と、評価・感想と、推測とは、別物である。)

2 件のコメント:

  1. >書き直せ!と主張しようとは思わない。
    別に主張は自由ですから主張したって構わないと個人的には思いますよ。

    >できるだけ正しく文章を読みこむことができるように、心掛けたいものです
    自己完結型ですか?
    前のブログの方でもウィキペディアについて、影響が小さくない等と語り、触れていましたね。
    そんなに気になるのならご自分で編集なさったらどうですか?

    しかしウィキペディアには優秀な人が沢山いますから執筆しにくいという事もあるかも知れません。
    特にロシアが絡む記事を編集する場合は、繊細な注意を払わないと潰されます(笑)
    ま、Kocmoc Kocmaさんがロシアの記事を書くのに「自信」がないと言う事であれば無理にとは言いませんが(笑)
    何回か愚痴られてたので「自分でやれば良いのに」「吠えてるだけ?」と疑問に思っていました。

    気に障れたのならすみません。
    傍から見た感想はこんな感じです。

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  2. >別に主張は自由ですから主張したって構わないと個人的には思いますよ。
    はい、勿論自由です。

    >そんなに気になるのならご自分で編集なさったらどうですか?
    嫌です。
    そういう意向は全くありません。
    きりがなくなるじゃないですか。
    変な記述は山のようにあるのに。

    コメントが入れられるようになりました!

    キエフさんは(笑)という表記がお好きなんですね。

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