2013年12月17日火曜日

作家とサッカーその10ロベルト・ボラーニョ

チリ出身のスペイン語作家で、2003年に50歳で亡くなったボラーニョ。
写真を観る限り、ちょっと神経質そうな、痩せたおじさんだ。

チリ。
ピノチェトの軍事クーデター。
「イル・ポスティーノ」の詩人ネルーダ。
(だから彼の詩は読んでいない。)
コロコロ。
可愛い名前のクラブだが、確か猛猫のこと。
ツェスカ・モスクワのマルク・ゴンサレス。
あ、でもあの人、チリ代表の選手だけどなぜだか南アフリカ出身なの。
あの時代にですよ。
彼に責任があるとは言えないけれど、なぜ彼の家庭はそのとき南アフリカにいたのだろう?
亡命ないし国外移住の人は文化人には多かったようだけど、スポーツ系で、しかもよりによって南アフリカにいたのって、何なのだろう?

短編集『売女の人殺し』の表題作は、スペイン?のどこかのサッカークラブを熱狂的に応援するグループの一員で、語り手によればそんなにマッチョではないが、惹きつける魅力を持っていたらしい彼が、TVに写ってしまったがために巻き込まれる出来事(たぶん悲劇)。
「瞳の中の秘密」を想起させる後味の悪さがあった。

作者ボラーニョはチリの人。
チリってそうなの?
短篇を読み進めていくうちに、何度かそう思う。
そうだったのか。
『売女の人殺し』では、この人サッカー好きじゃないのかなと思ったが、それは敢えて“売女”の視点からサッカーファンの男を描いているからなんだね。

『ブーバ』の語り手はチリ出身の元バルセロナの選手(当時左ウィング)で、タイトルロールはアフリカ出身のMF,そしてカンテラ出身でスペイン代表のスター選手エレーノが中心人物として登場する。
年代で言うと80年代あたりなのだろうか。
でもヨーロッパチャンピオンズリーグは既にあったわけだから…。
妙なことにリーグ戦でもチャンピオンズリーグでも勝ち進むのはブーバのある行為のおかげらしく、しかし活躍するブーバはユヴェントスに引き抜かれる。(で、バルセロナはユベントスに負けてしまう。)
サッカー選手の生活がここではまことしやかに綴られているのだけれど、結局ボラーニョはサッカー好きだったのか。
しかし、これも他の作品と同じように、切なく物悲しいチリの人の書く文学だ。

ボラーニョ、亡命・チリ・詩人・左翼+サッカーの世界。

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