「プロコフィエフ生誕120年記念 トークと上映の夕べ」
「幻のロシア絵本」を企画された沼辺信一さんが講師、それに音楽だけは有名な幻の映画「キジェー中尉」上映、とあって、大いに期待していた「夕べ」、期待以上だった。
まず嬉しかったのは、参加者が割と多かったこと。
シネクラブ例会はこのところ寂しい会が続いていたが、今回は久々に盛況…と言えたのではないか。
資料代は1000円(会員外価格)と少々高額かもしれないけれど、内容は充実。
それにもまして、沼辺さんのお宝資料(スライド+音楽)付きのトークはノっていた。
時間が限られているので、まだまだお話足りないようであり、こちらとしてもまだまだ聴いていたかったのだが…。
まず、プロコフィエフが、1923年9月8日バイエルンから日本の友人に出した(はずの)、関東大震災のお見舞い状の下書きの存在から紹介してくださった。
天才であるがために変人であり、不遜で「やな奴」でもあったプロコフィエフの、まめまめしい面が友人思いの誠実さと結びついた、感動の一面。
それが導入部、というサービスぶり。
語りがおもしろくて、いかにも慣れている、プロっぽい感じで、楽しかった。
締めはスターリン生誕60周年を祝うカンタータ「乾杯」。
リヒテルがべた褒めだったという名曲。
「スターリンを称える内容でなければどんなによかったことか」…うううむ。
モスクワ中央児童劇場創設者ナタリヤ・サーツの朗読(勿論ロシア語)つき「Петя и волк(いわゆる「ピーターと狼」)」、あー、これ欲しい!!!
さて、「キジェー中尉」。
プロコフィエフは自分でもお気に入りの作品だったのだけれど、映画の出来としては名作とはみなされていない。
たぶんプロコフィエフが音楽をつけていなければ忘れ去られた作品になっていただろう、というほぼ一致した評価がされている。
とはいえ、観てみると、まあそれなりに面白かった。
アネクドートが原作という、荒唐無稽などたばたのコメディー。
音楽の場面がそれほど効果的でなない、というか案外少ないしインパクトもない、というのは、まあいたしかたないだろう。
(沼辺さんや井上さんのお話によると、出演俳優たちが皆歌が下手だったからだとか。)
監督のアレクサンドル・ファインツィンメルは1982年没であり、粛清・戦争の時代も生き延びて、作品を作り続けた人のようだ。
但し、代表作がこの「キジェー中尉」に「コトフスキー」(プロコフィエフ)、「馬あぶ」(ショスタコーヴィチ)であるところから、作品そのものよりも音楽ゆえに名前が知れて、というか音楽のみ有名で作品そのものが幻と化している、という微妙な???監督さんである。
沼辺さんは、「この作品の音楽は、バレエ音楽が大抵そうであるように、別書き別撮りなので、あっていなくても仕方ない」(というか当然?)で、この経験を踏まえて、エイゼンシュテインとの仕事の折にはきっちり打ち合わせて完璧に効果的な音楽をつくることができた」とおっしゃっていました。
「キジェー中尉」あっての「アレクサンドル・ネフスキー」であり、「イワン雷帝」、というわけです。
「アレクサンドル・ネフスキー」は、シネマ・ヴェーラで4/25と4/27に上映されます。
但しなぜか英語字幕。
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