2011年4月17日日曜日

Pora umierać

「木洩れ日の家で」は、大阪ヨーロッパ映画祭 in Tokyoで上映された時は「美しく生きて アニエラと犬」というタイトルだった。
これでもよいと思うが、「木洩れ日の家で」に変えたセンスはなかなかだ。

ポーランド語の原題は<Pora umierać>。
ロシア語で言えばПора умеретьだな、と想像がつく。
作品中アニエラが独白する台詞だ。
直訳すると「もう死ぬ時だ」だけれど、久山宏一先生は「死んだ方がまし」と訳している(あまり深刻でなく、「生き辛い世の中ね、死んだ方がましなくらい」みたいな軽いニュアンスで、日常で慣用的に用いられているのだとのこと)。

Пора(…するときだ)は、なかなか使いこなせない副詞だ。
「もう寝なさいよ」とか「さあ帰らなきゃ」とか、そんな感じでしか使えないな、私は。

世界で最も愛されたソ連映画、とも言われる、チュフライの名作「誓いの休暇」は、田舎から出征した少年兵が思いがけず戦功を挙げて、勲章を上げようと言われて、それより自宅の屋根を直すために休暇をと願って与えられた、休暇中の出来事を描いたもの。
主人公のアリョーシャは、家に急がなければいけないのに、親切心を起こして、人のために尽くしてしまうために時間をくって、なかなか家に辿りつけない。
でも、帰らなきゃ、という意識はあるから、Пора дамой.とか Пора идти.とか Нада идти.とか、先を急ぐ台詞はよく言うのですよ。
でも、家に帰りつくと、もう屋根を直す時間は全然残っておらず、お母さんとほんの一瞬抱擁し合って戦場に逆戻り。
そしてそのまま帰って来ることはありませんでした。
という切ない話だ。

「誓いの休暇」はとっても好きな映画だけれど、「木洩れ日の家で」もすごくいい。


0 件のコメント:

コメントを投稿