2012年2月6日月曜日

春の後の冬

せっかく井上先生から案内をいただいていたのに、1月14日のシンポジウム「ソ連の崩壊と中東の激動」には行くことができなかった。

土曜日の朝10:00から夕方18:00までの、一日がかりのシンポジウムで、特に「アラブ政変とイラン」と題した講演はあの桜井啓子先生によるもので、是非ともお話を伺いたかったのだが。

「アラブの春」と称された、昨年主に北アフリカのアラブ圏の諸国で生じた体制移行、また西アジア・湾岸諸国にも広がりを見せた民衆の運動について、現時点で振り返るのは、勿論まだ早い。
ではあるが、立ち止まってある程度の検証をしておきたい、という思いに駆られていたところだった。

とりわけ、このシンポジウムの冒頭で塩川伸明先生がされたであろう講演「ペレストロイカの後半局面―「大衆的高揚」が翳りを見せ始めるとき」、それに続く上野俊彦先生の講演「「民主化/民主化後退」論を超えて―現代ロシア政治の実証的研究から見えるもの」にしても、ジャスミン革命(チュニジア)やムバラク退陣(エジプト)からほぼ1年たった今、実にタイムリーなものであったはずで、聞き逃したのがなんとも悔やまれる。

ペレストロイカ後のソ連・ロシアと、昨年の「春」を経たアラブ諸国、あるいは改革派ハータミー後のイランの現況と、現在のエジプトやチュニジア、参照比較をしてみて、またサッカーの試合後死傷者を出した衝突、NGOへの圧力かと思われる事件等、「春」当初の抑制的で非暴力的であったはずの人々の活動とその行方を、どう分析すればいいのかと悩んでいる。

モスクワの冬、テヘランの冬、アラブの冬、一度春を見たはずの冬は、ことのほかこたえる。

『<アラブ大変動>を読む 民衆革命の行方』は、昨年(2010年)3月3日に東京外国語大学で行われた公開ワークショップでなされた報告を中心にまとめられた論文集だが、さすが外語大、さすが酒井啓子先生編集の書籍であり、非常に得るところが大きかった。
リビアなど、その後大きく政情が動いたところもあったが、今後を読み説く上でも必読の(実はもっと早く読んでおくべきだった)書であった。

今のエジプト、今のシリアの情勢については、この本に書かれたこととそれほど乖離してはいない。
そういう現実に、慄然とする。

年年歳歳。
今年も春は来る。
そのはずだ。

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