(ストライプハウス美術館が閉館する時に、ご丁寧にカタログを送ってくださったのだが、今みつからない。)
演劇や映画の宣伝が中心だったけれど、公衆衛生もののポスターも結構おもしろかった。
いやしかし、演劇や映画や展覧会のポスターでは頭にがつんとくるような前衛的な作品がずらりと並んでいて、それまでの「ポスター」という概念を根底から覆すような、印象的な展覧会だった。
(カタログを見つけ出さねば。)
ロシアとか、たぶんアメリカとかイギリスとかフランスとか、所謂大国(主に文化的な意味で…というと、「アメリカなんて歴史が浅くて文化がない」みたいなことを言いだす人が特にロシアマニアに多かったりして困るのだが)であれば、どの分野にも満遍なく世界に伍する大物がいて、ちょっと探してみるとそれなりの成果を残していることがわかるものなのだが(日本もなかなか健闘していると思う、実はよく知らないけど)、国の規模がもう少し小さいとある程度得意不得意が現れてくるような気がする。
某先生から聞いた話だが、「プラハにチェコ語のサマーセミナーに行った時、クラスメイトのポーランド人女学生たちは『私たちポーランド人はピアノなら負けないけど、歌うのはちょっとね。声楽大国が周りにあるし。』とか何とか言って絶対歌わなかった。」そうなのだ。
そういうやや不得意分野もあるかもしれないにしても、ピアノよりも世界に冠たる大国であると、ポーランドが胸を張れるものというのは、映画、そしてポスターなのだ。きっと。
そのポーランドポスターが久しぶりに観られると知って、横浜まで行ってきた。
もっと早く馳せ参じたかったが、何かと忙しく、やっと行けた!
ヨコハマ創造都市センターというオシャレな建物の3階だ。
元銀行の建物を移設・再利用したとのこと。
小樽にかつてあったペテルブルク美術館みたい。
みなとみらい線馬車道駅の改札を出ますと、
(ここからいきなりですます調)
1b出口を出ろと書いてありますね。
出るというか、直結しています。
1階はいきなりカフェとショップですが、まずは3階の会場へ。
おお、チケットは6種類もあって一つを選ぶようになっています。
私はヴァルデマル・シフィエジ「マゾフシェ」のを選びました(右から2番目)。
図録は3種類。
私は「セチュアンの善人」を選びました。
(ミニポスター。この3つが図録のデザインになっています。「セチュアンの善人」は右。)
実行委員会は何という力の入れようだ!
図録売り場
ストロボでなければ撮影可。
入口付近
ほぼ年代順の展示なので、まずは第1章。55年以前のポスターです。
以下、撮影可だとは知らなかったので携帯で撮った写真です。
色が全然違います。
すみません。
「ワルシャワ・ポーランド」タデウシュ・グロノフスキ
会場では一番古い1936年の作品。
«ポーランドポスター»っぽくはないのだけれど(ちょっとカッサンドル似?)、魅惑的なワルシャワの風景です。
「すべての国民が首都を建設する」ヴィクトル・グルカ1952年
古い切手にありそうな絵
第2章はここで「ポーランドポスター学校」と名付けられたクリエイター集団が1955-65年に描いた作品群。
(「ポーランドポスター学校」という学校があったわけではなく、「~派」という意味での「スコラ/シュコーラ/シュコーレ」から来た言い方だと思われる。要はポーランドのポスターの未来を担おうと語り合ってそれぞれ作品を創りだしていったデザイナーたちのグループ)
ポーランドポスターの黄金期だったと言えるでしょう。
ヘンリク・トマシェフスキ
1956年演劇ポスター「セチュアンの善人」(ベルトルト・ブレヒト)
ユゼフ・ムロシュチャク
1958年バレエポスター「ペトルーシュカ・牧神の午後・シェヘラザード」(国立ワルシャワ・オペラ)
ヤン・レニツァ
1956年映画ポスター「マクシムの青春」(グリゴリー・コージンツェフ&レオニード・トラウベルク)
ヤン・ムウォドゼニェツ
1956年映画ポスター「夜の終わり」(パベウ・コモロウスキ)(上)と1955年映画ポスター「洪水の前に」(アンドレ・カヤット)(下)と1961年演劇ポスター「黄金の子牛」(イリフ&ペトロフ作、ワルシャワ・コメディー劇場)(左)
きりがなくなりそうだけど、あともう一つ。
ヴィクトル・グルカ
1958年映画ポスター「静かなドン」(セルゲイ・ゲラシモフ)
第3章はポスタービエンナーレが開催されるようになった1965年以降の作品。
1968年にヴィラヌフ・ポスター美術館が創設されました。
(今回の展覧会はこの美術館の所蔵作品です。)
ヘンリク・トマシェフスキ
1967年演劇ポスター「イルクーツク物語」(アレクセイ・アルブーゾフ作、ワルシャワの劇場)
ああ、色が全然違う!
美しい赤いバックに白い、シンデレラのような靴です。
社会主義建設の開拓物語であるイルクーツク物語でなぜこういうデザイン??
マルチン・ムロシュチャク
1981年映画ポスター「鉄の男」(アンジェイ・ワイダ)
私がストライプハウス美術館で観たのは違う作品だったと思います。
同じ作者ので「大理石の男」のポスターと並べて展示されていました。
スタシス・エイドリゲヴィチウス
1990年映画ポスター「鏡」(アンドレイ・タルコフスキー)
これはまた凄いな、としばし作品の前で棒立ちになりました。
(これも色が全然違っています。)
これを観てもわかるように、ポーランドのポスターは映画でも演劇でも、そのものの写真を使うことはコラージュにしても殆どありません。
それでも「あの作品だ」とイメージできるようになっているから凄いです。
チェコのポスターだとタイポグラフィーも凝っているものが多いけれど、ポーランドのはひたすら絵で主張します。
名残惜しいけれど、展示会場をあとにして下に降りましょう。
1階にはカフェとショップがあります、とのこと。
可愛い。期待できそう。
ホールはとってもおしゃれな雰囲気。
デートスポットですね。
こっちこっち。
こんなものが・・・これは非売品でした。
私はポストカードボックス(はがき16枚と缶バッジ入り)を買いましたが、マグネット、小さいクリアファイル、カレンダー、チョコレート、オリジナルTシャツなどが売っています。
紙袋も可愛いです。
あと、トートバッグがあったら買ったかも(素材がよかったら)。
カフェでは「法王さまのケーキ」と呼ばれているというクレムフカ(ヨハネ・パウロ2世の好物だった)とまんまるドーナツのポンチキ(ローズジャム入り)提供中。
私はポンチキをいただきました。
後日の補遺:ポンチキは複数形。いただいたのは一個なので、正確には単数でポンチェクです。
さて、地下鉄の駅から直接上がってきましたが、ヨコハマ創造都市センターはこんな建物です。
では、
帰り道、馬車道駅です。
インターコンチネンタルホテルと観覧車が見えます。
リューダさん、あなたがいたら、きっと私、メーリニコフ展のときのように、「観に来てください!来なきゃだめです!」と会場から電話したに違いないです。
観る来る価値大いにあり。
いや、来るというより通う必要があるように思います。
会期は12月3日までなのだけれど。
※写真は40枚くらい撮りました。別の場所にアップする予定。
とても素晴らしいものだったので、厳しいけれどもう一回来る機会を持ちたい。
ただ、図録については…これは別項で。
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