2011年9月18日日曜日

カルメンの大祖国戦争

ロマン・カルメン監督作品ということになっている、ドキュメンタリー映画「大祖国戦争」。137分の大作。

冒頭に、236人の従軍写真家による記録映像であり、うち40人が犠牲になった、とある。

ナレーターは「このようにして赤軍は勇敢に闘ったのであーる!」と愛国主義全開。
ナチスドイツの蛮行を示す犠牲者の映像など観るのはきついが、「若者よ、これは事実なのだ、目を背けていいのか?忘れていいものか?」と畳みかけるようなナレーションが被さる。

こんなふうに言わないといけないほど、戦争の記憶は危機にあったのだろうか?
1965年、戦勝国のソ連でも。

全部記録映像のはずであり、事実なのだろうが、編集によってこんなに盛り上がれるものかと思うくらいドラマチックで、137分という長さを感じさせない。
戦争直前の世界情勢から始まって、バルバロッサ作戦、41年の辛い夏、モスクワ攻防、レニングラード包囲、スターリングラード攻防、クルスク、キエフ、国境を越えてベルリンを目指し、ベルリン陥落、勝利と一気に見せるため、派手な戦闘場面が多いと感じる。
私の大好きなアラノヴィチとかゲルマンとか、いわゆる“男の世界”を描くのが好きな監督の戦争映画だと、ひたすら地味な場面が多くて、戦争の映画というとそっちの方に馴染んでいたので、メルケル首相じゃないが「くらっときたわ」的な素直な感動を覚えたのは事実。
(一方、プロパガンダ臭が強いのも事実。)
というわけで、レニングラード包囲戦はあんまり出てこなかった。
他にも包囲された中での持久戦の場面は、記録映像があんまり残っていないのか、編集で「絵にならない」と採られなかったのか、少なかった。

字幕は固有名詞をあまり丁寧には訳出していなかった。
字数等の制約があるからなのかもしれない。
「ベロロシア(白ロシア)」を「ロシア」とするなど、細かい間違いは散見された。

メモ:ロストフの場面で、字幕で「負けるものか」となっていた原語はРостов наш(ロストフは我らのもの)

ブレストの攻防戦で、煉瓦が溶けるほどの砲弾の嵐の中で、兵士たちが壁に書き残した「さらば祖国よ(Прошай Родина)」の文字が心に深く刻まれた。
(ほんとうはもっと長いフレーズの最後の部分です。)

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