台風で立ち往生している間に、ナボコフの『マーシェンカ』を読了。
ナボコフの処女作。
最初にロシア語で書きあげ、ベルリンの亡命系出版社から刊行。
次いでドイツ語版を出したけれど、この二冊は話題にはならず忘れ去られ、40数年後の英訳(ナボコフ自身も関わる)でようやく日の目を見たという代物。
英訳に当たっては、他のナボコフの作品のように改作はしていない、という。
それだけに、ナボコフにしては全然凝っていないし、素直で若やかで清々しい読後感がある。
練れていないという欠点はあれど、特に視点がリュドミーラやクラーラ等の女性側に移った時のぎこちなさに関しては本人も自覚してのものだったようだけれど、それを補って余りある、天才のデビュー作だ。
ナボコフにしろ、ミハルコフにしろ、甘えた男の身勝手さをそのまま描いているのが一番性に合っている。
いつものナボコフが苦手な人にも、大丈夫。
二度と戻らぬロシアへの郷愁と、やはり二度と帰ってこない初恋へのなんともセンチメンタルな回想なので、結末はまあ・・・どんでん返しなしですが、楽しめるでしょう。
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