2011年6月17日金曜日

令嬢たちのロシア革命のペテルブルグ

『令嬢たちのロシア革命』は期待以上に面白い。
改めて、ペテルブルグはロシア革命のゆかりの土地だったのだ、と思い出す。

今では、ガイドさんもそんな説明をしてくれないのですよ。
せいぜいスモーリヌィにソヴィエトが置かれていたことを言うくらいで。

 ↑
巡洋艦アヴローラ号

スモーリヌィ

タヴリーダ宮殿も、カザン聖堂も、そういう歴史の現場となったところだったのですね。

 タブリーダ

 血の救世主教会(スパス・ナ・クロヴィ)

カザン聖堂

ロシア革命に積極的に関与した女性たちは、かなりの名家のお嬢様方が多かった、として、この本では5人の令嬢のロシア革命前後の生きざまに肉薄しています。
彼女らの人生の華やかなこと!
きらきらと魅力的だったのでしょう、きっと。

空間的にも(ペテルブルグという場所)、人間関係の面からも、再発見の多い、実り多い本です。
女性で初めて大使となったコロンタイは、あの名指揮者ムラヴィンスキーの叔母さんだった。
コロンタイの姉も名歌手であった。
とか。
あのスターソフの姪がレーニンの秘書であった(お父さんは革命家の弁護人を引き受ける法曹であった)。
とか。

純粋に歴史学的にみると詰めが甘い面はあるのかもしれない(人間関係、特に男女の仲に関しては結局想像でしか書けない部分もある)けれど、おもしろい一冊です。
『女三人シベリアの旅』と似た雰囲気、とも言えます。
 本書の構成は次のとおりである。
 プロローグで、ロシアの令嬢たちが自らの解放を遂げるために女性解放運動と革命運動にどう関わっていったか、その系譜を概説する。第Ⅰ部で、五人の令嬢たち、すなわち、フェミニストの先陣をきってカデット(立憲民主党)に入り、ソヴェト権力に反対を貫いたアリアドゥナ・ティルコーワ、女性解放を目指しながらもフェミニズムを批判し、社会主義運動に入り、帝国主義戦争反対を革命に結びつけたアレクサンドラ・コロンターイ、そのコロンターイを革命運動に引き入れ、令嬢の中の令嬢でありながらボリシェヴィキの優等生だったエレーナ・スターソワ、レーニンの秘書的役割を務め、レーニンとその妻クループスカヤとの不思議な三角関係を結んだイネッサ・アルマンド、エスエル(社会革命党)の闘士として国際的にも名を知られ、ボリシェヴィキと連帯し、その後闘争することになったマリーヤ・スピリドーノワの1917年までの生き方を述べる。第Ⅱ部で、1917年2月から18年3月までのロシア革命・ソヴェト政権初期に彼女たちが果たした役割を位置づける。エピローグで、彼女たちの後半生を概観して命の閉じ方を跡付ける。(まえがきより引用。太字部分は本書にはない。)
「プロローグ 帝政にあらがう女性たち」に登場するのは、
*旧教徒フェオドーシャ・モローゾワ
*帝国科学アカデミー総裁エカチェリーナ・ダーシコワ
*デカブリストの妻マリーヤ・ヴォルコンスカヤ
続いて慈善運動と高等教育の女性への門戸開放の請願運動を行ったフェミニストたち
*マリーヤ・トゥルブニコーワ
*アンナ・フィロソフォーワ
*ナジェージダ・スターソワ(エレーナ・スターソワのおば)
これらの恩恵(ベストゥージェフ女子大学運営援助、女性高等教育援助協会設置)を受けたヴェストゥージェフ女子大卒業生たち
*国際的数学者ソフィヤ・コワレフスカヤ
*ナジェージダ・クループスカヤ
(アリアドゥナ・ティルコーワもここの卒業生)
ニコライ・チェルヌィシェフスキー『何をなすべきか』のヒロイン、ヴェーラを目指して自己解放を得ようとした女性たち
*アンナ・コルビン=クルコフスカヤ(ソフィア・コワレフスカヤの姉)
(や本書では出てこないアポリナーリヤ・スースロワもドストエフスキーと別れた後はこの方面でかなりの働きをしていたはず)
そしてナロードニキとテロリストたち
*ヴェーラ・フィグネル
*ヴェーラ・ザスーリチ
*ソフィヤ・ペトロフスカヤ
*ゲーシャ・ゲルフマン
そしてマルクス主義の革命家
ナロードニキ系
*オリガ・ヴァレンツォーワ
*リディヤ・クニポヴィチ
*エカチェリーナ・クスコワ
非ナロードニキ系(お嬢様ではない)
*ネヴゾロワ姉妹(ソフィヤ、ジナイーダ、アヴグスタ)
*エヴァ・ブロイド

ここまでがプロローグに名の挙がった女性たち。
この他にも、「革命のおばあちゃん」エカチェリーナ・ブレシコ=ブレシコフスカヤをはじめ、綺羅星のごとく革命家の女性たちが登場。
あと、この本を読んで、今までエイゼンシュテインの「十月」を観ていて、冬宮を防衛する(帝政側の)女性部隊が突然登場するのが何なのかわからなかったが、それがマリーヤ・ボチカリョーワの「死の女性大隊」だったのか、とやっとわかった次第。

今度ペテルブルグに行くときには、ネフスキー大通りのネコの像ととともに、令嬢たちの夢の跡を辿るのもいいかもしれない。

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