2012年9月12日水曜日

主は与え、主は奪う

主の御名はほめたたえられよ。
と続く、ヨブ記の聖句がそのまま頭に浮かぶほど、ウクライナの田舎町で慎ましく牛乳屋を営んでいたテヴィエが、家族を失っていく様子を作者宛の私信の形式で描いている。

テヴィエの語り口がユーモラスなだけに、彼に次々と降りかかる災難が実に痛ましい。
ミュージカルとして大ヒットしている『屋根の上のヴァイオリン弾き』よりも、この原作はずっと物悲しい。
次から次へと娘に離反されるテヴィエ自身はもちろん、娘たちの方も誰も幸せにならない。
(一番上の娘はそれでもまあささやかに生きているじゃないか、下になるほど不幸度が増すようだ、などと思って読み進めていくと、それがね…)
ヨブ記における義人ヨブの試練、エステル記におけるユダヤの民への弾圧が、テヴィエによる聖書のややいい加減な引用という形で、テヴィエの人生に重ねあわされる。

しかし、それでも人生は続く。

以下は、«テヴィエ»の上演及び映画化についてのメモ

『牛乳屋テヴィエ』Тевье-молочник
・1919年ニューヨークで上演。主役・演出はモーリス・シュヴァルツ(1935年ポーランド版、1939年アメリカ版の映画化も行う)。音楽はショロム・セクンダ(「ドナドナ」の作曲者)。
・1938年~ モスクワの国立ユダヤ室内劇場(シャガールが壁面・天井・緞帳等をデザインしていた)で上演される。テヴィエを演じたのは著名なユダヤ人俳優ソロモン・イホエルス。
・1985年ソ連でTVドラマ化。主演はミハイル・ウリヤーノフ。

「ハヴァ」
・1919年に製作された無声映画。

『テヴィエの娘たち』
・1949年に刊行された『牛乳屋テヴィエ』の英訳本。

・1957年、『テヴィエの娘たち』に基づいた舞台化。

『屋根の上のバイオリン弾き』Скрипач на крыше
・1964年初演。英語。(イディッシュ語はひとことも話されず。)
・1967年日本初演。
・1971年ノーマン・ジューイソンによる映画化。
・ロシアでは1998年・2005年・2012年に上演されているようだ。

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