クラスメイトとしての彼女の印象は、気品にあふれる貴婦人。
さすが文豪の家系と思わせるだけの、美しい日本語の遣い手であり、素敵な和訳を紡ぎだすのであった。
ロシア語名(授業の時に使うロシア風の名前です)はリュドミーラ、略称リューダ。
最初にソ連を訪れたときの通訳さんのお名前をいただいたのだとか。
装丁家として多くの作品を残しています。
特に医学書の装丁を多く手掛けていらっしゃいました。
講談社の『からだの地図帳』『病気の地図帳』等々。
勿論、ロシア・旧ソ連圏関連の書籍の装丁も数多く、群像社の『大学教師』『チャイコフスキー 文学遺産と同時代人の回想』など枚挙にいとまがありません。
作風は人柄をよく表わしていて、上品でおとなしめです。
黒田龍之助先生の初期著作『ロシア語文法への旅』(↑)、
黒田先生が“ヒヨコ”と呼んでいらっしゃる金指久美子先生の『スロヴェニア語入門』
の、あの美しい装丁もリューダさんの作品です。
リューダさんは当初白山にお住まいだったのですが、そこを引き払って富士山の麓に移られた際に、本を整理するのだとおっしゃり(同じ本が2冊あったのだとおっしゃっていたのだと思う)、ソ連で刊行されたブックデザイナーを紹介する、たいそう立派なご本をくださったのです。
Искуство шрифта Работы московских художников книги
(今更ながら、こんなに分厚いご本を持ってきて下さったのかと思うと、感謝に堪えません。)タチヤーナ・マーヴリナの頁
貴重な、ほんとうに美しいご本なのですが、残念ながら私のもとでは宝の持ち腐れ気味になっています。何か活用できたらいいのですが。
今日も久しぶりに引っ張り出して、リューダさん、あなたを偲んでいるのです。リューダさん。
先日、「百合子、ダスヴィダーニャ」を観て(その前に原作の同名の本も再読して)、中條百合子が湯浅芳子に「ロシア語で“私の愛しい人”ってどう言うの?」と聞き、芳子がМоя милая дорогая(モヤー・ミーラヤ・ドロガーヤ)だと答え、「だったらこれからあなたのことを“もや”と呼ぶわ」と、“愛の告白”をする場面で、私はあなたを懐かしく思い出したのです。
リューダさんが招待してくださった装丁家の作品展で、確か銀座の王子ホールの向かいのギャラリーだったと思うけれど、「装丁家が自分の本を装丁する」という企画展示がありました。
リューダさんの装丁したリューダさんの本の題名は“Душа моя”(私の魂、転じて私の愛しい人)でしたね。
やっぱりリューダさんらしく品が良くシックな装丁だった。
あのクラスでは、よい先生に恵まれ、もしかしたらそれ以上によき友人たちに恵まれました。
Спасибо, моя душа!
リューダさんのことが書かれているブログ
http://toshosekkei.blogspot.com/2009/06/book-scape28.html#uds-search-results
http://www.bossabooks.jp/product.html?asin=4475018501
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