視覚しているものから響きを感じ取り、効いているものから目の前にある光景が浮かんでくるということは、普通によくあることでしょう。
美術と音楽のコラボレーションの試み、昨夜はその一つ国立近代美術館60周年企画「絵と音の対話」の第一日、「絵と音―対話的手法」に行ってきました。
プログラムはバリトンの松平敬さんがほぼ一人でこなすものでした。
音編
1.グレゴリオ聖歌:«主の祈り»、«めでたし、天の星»
2.ジョン・ケージ:«一人のための音楽»
3.ジョン・ケージ:«8 WHISKUS»
4.早坂文雄:«うぐいす»«孤独»(『春夫の詩に依る四つの無伴奏の歌』)
5.湯浅譲二:«R.D.レインからの二篇»
6.草野心平:«ごびらっふの独白»
7.クルト・シュヴィッタース:Obervogelsang,The real disuda of the nightmare
8.木下正道:«石をつむⅡ»
9.ジョン・ケージ:«アリア»
これと、開演ベルが松平さんご自身の作曲の«杉並コール»でした。
美術編
1.ヴァシリー・カンディンスキー「全体」1940年 ↓
2.クルト・シュヴィッタース「E.+E.シュヴィッタースより」1947年
3.ハンス・リヒター「色のオーケストレーション」1923年
掛け軸状・巻物風になっていたという作品。なので、上から巻物を広げるようにして視線を映しましょうというアドヴァイスをプレトークでいただきました。
4.古賀春江「海」1929年
5.北脇昇「周易解理図(八卦)」1941年
6.若江漢宇「見る事と視える事―枝」1978年
(第二日・第三日のための絵画)
7.横山操「ウォール街」1962年
8.ゲルハルト・リヒター「抽象絵画(赤)」1994年
9.李禹煥「線より」1977年
10オスター・ココシュカ「アルマ・マーラーの肖像」1912年
11南薫造「少女」1981年
12藤田嗣治「五人の裸婦」1923年←猫・犬います
13イチムラレイ「横たわる少女」1997年
14横山大観「或る日の太平洋」
15ジョン・ケージ«アリア»楽譜1958年 ↓ これなんですが
絵本のようですが、楽譜なのです。
これでどんなふうに楽譜として使うのか?と、演奏前には頭をひねりました。
プログラムノートによると、
「10種類の曲線は演奏者によって選択される10種類の唱法に対応する。」
「歌詞は5ヶ国語のテキスト断片によるコラージュ。」
左下に見える「黒い正方形は任意のノイズ」
ということで、下に掲げた写真のように、たくさん音の出るものを持ち込み、いかにも現代音楽だなあという、ひゅうひゅう、ぽこぽこ、しゃりしゃりといろいろな音を出していました。
上の「楽譜」は展示用のものでしたが、市販もされています(8000円とちょっと)。
下の「楽譜」は松平さんのもので、演奏用にいろいろ書き込みがあります。
例えば右上のロシア語「GDE ONA」(彼女はどこ)の上には「ファルセット」と書き込まれています。
5ヶ国語とは、アルメニア語・ロシア語・イタリア語・フランス語・英語です。
アルメニア語…はどれだかさっぱりわかりませんでした。
なぜアルメニア語なのか、ジョン・ケージってアルメニア系だったの?
いえ、この曲がアルメニア人ピアニストMaro Ajemianによって初演されたものだからのようです。
告白しますと、私は以前ジョン・ケージの曲が演奏されるコンサートに行ったときは、少し眠りました。
加えて「早く終わってくれ~」という気分になりました。
しかし、今回はうって変わって楽しめました。
視覚効果がこんなにも現れるとは。
現代音楽って、どうも皆グバイドゥーリナに聞こえるのですが、今回のプログラムでは日本人作曲家の作品は雅なイメージが色濃かったし、グレゴリウス聖歌と並べても意外と合うものだなと認識できたわけです。
蛙語(今回は原語演奏のみで日本語訳なし)はドイツ語みたいだった!
美術作品の撮影は、演奏中以外であれば可でした。
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