失業と貧困と犯罪で踏み外している若者が、愛する人を得、父親となったことをきっかけに、再生していく。
美形のジェレミー・レニエが演じると、父親としてはもう少し危なっかしかったが、「ある子供」である。
あと、「息子のまなざし」なども思い出す。
演技未経験だったというポール・ブラニガン、ぱっと見セルゲイ・セマクっぽいので、いい父親になるのではないだろうか。
セマクってセクシー系ながら既に7人の子持ちです。
案の定、ポール君はサッカー得意のようだけれど、この作品にはサッカーネタはない。残念。
ローチ監督は大好きなんだけど、多くの作品で暴力的な面が目について、それはちょっと苦手だったりする。
「ブレッド・アンド・ローズ」の過激なストライキの様子(アメリカ研究をしている友人に「アメリカってあれでも刑事や民事で免責になるの?」と思わず尋ねてしまった。あ、あれは映画だからねと答えられた。)
「明日へのチケット」の強行突破のラスト。
「エリックを探して」のご冗談でしょう、カントナさんの解決法。
「ルート・アイリッシュ」の、それだけは超えてはいけない一線を超えてしまう主人公。
今度のも、いやはややっぱりそれはいけないよね、という手段をとる主人公たちなのだが、まあ誰も傷ついていないということで、大目に見ることにしましょう。
ハッピーエンドでよかった。
登場人物の一人ひとりが魅力的だった。
優しいおじさんのハリーさん。
いい味出しているおじさんのタデウシュ。
(この人、クライアントが「モスクワ」だというけれど、名前から言うとポーランドっぽいですよね。)
「明日へのチケット」の二人は随分老けていたけれど、相変わらずばかっぽいところが素敵。
近頃話題の修復的司法(被害者やその家族との面談)が挿入されるのは、脚本のラヴァティが弁護士出身だからだろう。
主人公が傷つけた相手の癒しきれない深手は、重い印象を残す。
服役したことだけでは贖ったことにはなり得ない。
さよなら、銀座テアトルシネマ
最後はケン・ローチの「天使の分け前」
Кен Лоуч ”Доля ангелов”
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