2012年7月21日土曜日

かえるかえるはみちまちがえるむかえるかえるは

ワタリウム美術館にはロトチェンコ展以来だ。
「ひっくりかえる展」

ロシアのラディカルな、一種のコンセプチュアル・アート集団ヴォイナ(戦争)が目当てだった。
美術館の外壁に彼らのバナーが。

「指名手配犯ヴォイナ、2012」
ヴォイナのメンバーであるオレグ・ヴォロトニコフが刑事法廷に立っているところのポートレートをビラにしている。(ロシアの刑事法廷では、被告人を檻の中に入れていたりするのだ。いかにも犯罪者だ、と言わんばかりに。それでも陪審員裁判では死刑判決が抑止されていたというから不思議だ。)会期中福島でもこれが掲げられているという。あと、津波による被災地でもこれを掲げるパフォーマンスをしている映像があったが、警官は(当然ながら)「法律で決まっているから」云々と阻止しに来ていた。

 遠くから観るとこんな感じ

こういうパフォーマンスは過激さとセンスが命だと思うのだけれど、率直に言って、ヴォイナのセンスは私とは相いれない。

何だろう。
主張自体はまともでも、結局迷惑なことをして、台無しにしているような気がするのだが。

過激で品がよろしくはないが、彼らの作品のタイトルを掲げる。

・上記の「指名手配犯ヴォイナ」2012年
・「無血クーデター」2010年
オレグとナタリヤの息子カスパルのサッカーボールがパトカーの下に入った後、それを取ろうとしてか、パトカーを転覆させる。メンバー二人は逮捕・拘留された。このパフォーマンスの目的はロシア自治省の改善を求めるものだったそうだ。
・「後継者のためのファック、メドヴェージェフの小熊!」2008年
この文句を書いた横断幕を掲げつつ、博物館内で数組の男女が裸体で公開セックスをしたというもの。プーチンとメドヴェージェフへのあてつけという政治的意図があるのだろう。
・「KGBに捕まったペニス」2010年
跳ね橋の路面に巨大なそれを描き、跳ね橋が上がると橋の前にある連邦保安庁のビルに向き合うように見せるというもの。ここでも一瞬で逮捕される。
・「クレイジー・レーニャ、政府に乗り上げる」
青いバケツを被ってモスクワクレムリン前で待ち伏せし、政府要人の車に突撃して乗り上げるレーニャさん。これも何らかの政治的意図あり。
・「誰もペステリのことなど気にとめない」
カッコいい行進曲「モスクワ」などをバックに、ハイパーマーケットの売り場でゲイとブルーカラーのウズベク人合計4人が首を吊る(←処刑されることを表している)。マイノリティーへの攻撃的な発言をしているモスクワ市長への抗議だという。

というわけで、充分ラディカルでインパクトはあるけれど、悪趣味なんだよな。
悪趣味がだめと全面否定をする気はないけど・・・いやいやかなり苦手です。

後の人たちはこれほど変ではなかった。
フランスのJRというアーティストの作品には感心した。
考え抜かれている。
彼だって逮捕されかねないような«やばい»(政治・外交的にだったり、純粋にその国の刑事法上だったり)こともしているが、ぎりぎりでクリアする技を持っている。
訴えたいこと、伝えたいこともしっかりしているし、いかにしてという部分もさすがなのだ。
それこそセンスがいいのだ。
スピーチもいかにも頭がいいというイメージだ。
同じ職業のユダヤ人とアラブ人との写真を並べて貼っていくというパフォーマンスは映画「プロミス」などで観てきた共感のプログラムが今でもあの地で続けられていることを感じた。
今ではそれがとても難しくなったと嘆いていたけれど、「難しく考えることはない、アートなのだ」と彼は言う。
こんなアートはいいな、と思う。
悪趣味ではない。

この後、渋谷に出た。
せっかくだから、ヒカリエの8階に今日も行ってみた。

今日も盛況だった。

文化村に行って、レーピン展の前売り券を買ってきた。

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